環境・エネルギー分野は
産業基盤への発展が期待
国内産業は今後、工場の再配置や産業のグローバル化によって、集積構造から付加価値構造へ転換していく方向にある。
なかでも、わが国が技術をリードする自動車用2次電池や太陽電池などの環境・エネルギー産業は、素材から最終製品まで大きく発展していくと見られる。
太陽電池の世界市場は近年拡大しており、この市場動向を背景に国内メーカーは生産増強を行っている。また、今回の震災により、家庭用太陽光発電や企業等の自家発電システムの普及、メガソーラー(出力1メガワット以上の太陽光発電所)事業の展開が全国で進む方向にあり、各メーカーの設備投資は急速な拡大が見込まれる。
環境・エネルギー産業は、企業や大学、研究機関が、試作研究のフィールドとするための産学官連携ネットワークを創設し、都市型産業へと発展する可能性がある。今後は、技術を国内で育て、環境負荷の低い新しい産業を創出し、日本の産業競争力を高める基盤に育てていくことが重要になる。
次世代中核産業として
期待される航空機産業
わが国の航空機産業が全産業に占める割合は非常に小さく、自動車産業の4%、GDPの0.29%にすぎない。しかし、航空機産業は部品調達のグローバル化が進展し、多くの日本企業が部品製造を担当しており、米ボーイング社のB787の機体製造では数十社が参加し、約35%を生産している。今後、B787が増産体制に入るほか、三菱リージョナルジェットの生産開始で、部品生産発注の増加が予想されている。次世代の中核産業となることも期待されることから、国内各地域では地元企業のビジネスチャンス拡大と、地域産業の高度化・振興に寄与するものとして、航空機産業への参入に向けて協議会や研究会を立ち上げ、技術向上と人材育成の取り組みを行っている。
技術革新に不可欠な
大学の知と人材育成
日本経済を牽引してきた自動車関連産業は、国内において、次世代自動車を成長分野と位置づけて投資を拡大している。
次世代自動車や航空機産業は、企業と大学の連携による技術革新が進むことで、新たな産業が生まれる可能性を持つ。環境・エネルギー分野を含め、これからの産業は製品開発力を有する知識集約産業への転換が重要となる。
地方自治体においては、こうした産業動向に目を向け、企業誘致活動を行う時期となっている。同時に、研究開発や製造技術、生産技術の向上を図る産学連携体制を整備するとともに、高度な知識を持った人材育成も必要である。日本全体としては、地域経済再生に向けて、産業インフラと知識インフラが連携し、新たな産業集積を図るための戦略的な産業復興・誘致活動が求められる。