【コラム:補聴器マメ知識】
難聴を自覚しても、補聴器装用までには時間がかかる

「聞こえにくい」と感じてから、実際に補聴器を着けはじめるまでに平均8年以上かかる。

 世界一の高齢社会を迎えた日本だが、補聴器の普及という点ではまだまだ遅れている。

 まず聞こえの衰えを認識してから補聴器にたどり着くまでが非常に長い。「補聴器供給システムのあり方研究会」が02年に行った調査によると、聞こえにくいと感じてから実際に補聴器を装用するまでに、平均でなんと8年以上もかかるという。聞こえの衰えに気付くことに時間がかかりがちなことについては、本企画の最初のページや本文でふれたが、その点も合わせて考えると、いかに不自由な状態で放置されがちなのかがよくわかる。

 しかも難聴を自覚してから80%の人が着け始めるまでにはじつに19年を要するという報告もある。

 これは聞こえの衰えを自覚しながらも、「補聴器を着けない人生」を選択する人がまだ多数いると見ていいだろう。人間の能力をサポートするツールであるメガネと比べても驚かされる数字だ。

聞こえの衰えの自覚は50代から増えるが、この世代は社会において重要な決定を下す立場の人が多い。ちょっとした聞き間違いや聞き漏れが、商談などの命取りになりかねない。

また、聞き間違いなどが重なると、周囲の人側も話しかけることに気兼ねしたり億劫になりがちだ。こうなると、単純な聞き逃しという問題だけでなく、機会の損失という側面も見えてくる。軽く考えがちな聞こえの衰えだが、逃しているビジネスチャンスは存外大きいといえるだろう。