復興財源の確保のため、世の論調は増税やむなしというムードに傾いている。住宅関連の優遇税制も年々縮小傾向だ。これでは、日本人にとって豊かな住まいがさらに遠のく、とホームアドバイザー社長・井端純一氏は警鐘を鳴らす。

──2012年は復興財源確保と社会保障費を賄うため、国民の税負担が重くなりそうな雲行きだ。

いばた・じゅんいち
同志社大学文学部新聞学(現メディア学)専攻卒。リクルートを経て、『週刊CHINTAI』『ZAGAT』取締役編集長などを歴任。2003年、ホームアドバイザーを設立。新築物件・土地検索サイト「ホームプラザ」、中古物件サイト「オウチーノ」、リフォーム業者入札サイト「リフォーム・オウチーノ」、建築家マッチングサイト「建築家オウチーノ」を運営。著書に『広報・PR・パブリシティ』(電通)等がある。

 安易な増税は景気の低迷を招くだけ。ムダの徹底排除や税の公平性という観点がなおざりにされ、取りやすいところから取る、というのは許されない。

 たとえば、最近おかしいと思うものに、テレビ局の自社CMがある。局の副業である主催イベントや出資映画、コンサートなどのCMがひんぱんに流れている。

 本来テレビは公器であり、局が私腹を肥やすために電波を使うことなどあってはならない。復興財源として携帯電話の電波利用料を値上げすべきだという経済財政担当大臣の発言があったが、テレビ局が支払っている電波利用料は、携帯電話会社の10分の1以下。むしろテレビ局を値上げすべきだ。

 携帯の電波利用料の値上げは、いずれ私たちに転嫁される。苦しさが増すなかで、豊かで快適なマイホームを手に入れることなど、ますます遠のいてしまう。

――住宅政策は「景気回復の2番バッター」といわれ、公共事業に次ぐ重要政策として扱われてきた。

 そのとおりだが、税の面でみると、欧米と比較して、住宅購入や生活必需品にかかる日本の税負担はまだまだ大きい。とくに重いのが印紙税だ。

 たとえば、11年度の日本の税収入39.6兆円に対し、印紙税は1兆240億円で約2.6%を占めている。多い年度は5%近い。高いといわれる酒税に匹敵する主要税収の一つといっていい。

 ところが、印紙税については国際比較がなされたことはない。現実には先進国のほとんどは、印紙税を撤廃するか、あっても税収に占める割合は0.1~0.2%に過ぎないのだ。

 不動産取引の場合、1万円以上の売買を行えば、さまざまな段階で印紙税がかかる。これは結果的に二重に消費税を払っているのと同じことになる。

 高い買い物である不動産の契約には、不動産取得、登録……と、事あるごとに印紙税がついて回る。これに類するケースを含めると、「日本の消費税はすでに20%以上だ」という説もある。

――消費税が実質20%なら、税率を欧米並みに引き上げるという議論の前提がおかしくなると?

 この印紙税をはじめ、不透明な特別会計など、官僚主導の不公平なシステムの可否を議論せずに、ただ消費税を上げるのはフェアではないだろう。第一、増税と法人税の減税でしのぐ安直な国家ファイナンスは19世紀のものだ。

 欧米では、生活必需品である食料品等に加え、家も非課税というのが一般的だ。抜本的な見直しもせず増税に踏み切ったのでは、消費者心理がますます冷え込んでしまう。ムダをなくし、生活に密着したものに関する税負担を軽くすることが、ひいては景気浮揚につながるのではないか。

この記事が収録されている「週刊ダイヤモンド」別冊 2011年10月15日号 『納得の「住まい」を選べ!』の詳しい内容はこちらからご覧いただけます。

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