もはやITなしではビジネスが成立しない時代。しかし一方で、特に中小企業においてIT活用がなかなか進んでいない現状がある。その背景にあるのが、適切なIT人材の不足である。この課題を解決するカギはどこにあるのか。

IT人材の不足が
中小企業経営を直撃する

 IT人材は現在約17万人不足しており、人口減少とIT需要の拡大から2030年には不足数は78.9万人にまで拡大する――経済産業省が昨年6月に発表した「国内IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」は、大きな驚きをもって各メディアで報道された。

人材難の中小企業の競争力を向上させる強力な“武器”とは?図 規模別のIT人材の充足度
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 その影響をもろに受けるのが中小企業である。すでに現状でも、IT人材が「十分に確保されている」「おおむね確保されている」という中小企業は2割程度に過ぎない(図)。今後ビジネスにおけるITの役割が拡大していくことを考えると、これは企業の存亡にもかかわる問題だ。

 実際、総務がIT担当を兼務していたり、少し技術に詳しい社員が実質的な担当者になっているという中小企業は少なくないだろう。付き合いのあるITベンダーにすべてを丸投げしているという会社もあるはずだ。これこそが、中小企業でIT活用が進まない原因といえるだろう。

 この問題解決のカギを握るのが「クラウド」である。実際、10年近く前にクラウドが登場したときに言われたメリットの一つが「中小企業に有利」ということだった。「導入が容易で、撤退もしやすい」「専任技術者が不要」「導入コストが安い」といった特徴はまさに中小企業にはうってつけだったのだが、10年たってもなかなか導入が進んでいないのが現状だ。

 例えば、社内に高価なサーバーを設置して、そこに財務情報をはじめ、社員が作成した見積書や企画書などまで貯め込んでいないだろうか。少したつと容量が逼迫してきて全社員に削除をお願いしたり、ソフトウエアのアップデートで運用保守費用がかさんだりしてしまう。これらもクラウドに移行すれば、月額の比較的安い価格で利用でき、運用保守の手間もかからない。

 また、ひと昔前までは「ビデオ会議」といえば資金力のある大企業が利用するもので、専任の担当者も不可欠だったが、現在ではWeb会議や音声会議のサービスがクラウド上で安価で提供されている。

 さらにいえば、クラウドは、現在話題となっている「働き方改革」や、経営者にとって頭の痛い「セキュリティ対策」にも有効な側面がある。そうした活用例を以下で紹介しよう。

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