日本で独自に発展した
機械警備システム

  現在、大手警備保障会社が特に力を入れているのが機械警備だ。機械警備とは、警備対象となる施設にセンサーを設置して、侵入や火災などの異常を監視し、センサーが検知した場合に警備員が駆けつけて対処するサービスのこと。日本の機械警備は、世界でも独自な発展を遂げてきたと田中氏は語る。 

 「欧米の機械警備は、センサーなどの設備の販売が中心で、警備員を出動させる会社は別です。売りっぱなしで設備の品質が保てないため誤作動が多く、警察のムダな出動回数を増やしているという問題があります。一方、日本では、設備は警備会社がレンタルなどで提供します。設備の提供から設置、警備員の出動などを一つの会社がトータルで行うので、質の高い警備システムを維持できるのが特徴です」

 また大手企業は、独自の研究開発力や資金力を生かし、最先端技術の開発にも力を入れている。各種センサーと画像解析技術による顔認証システム、地理情報システムや高解像度カメラを活用した監視システム、遠隔操作で動く警備ロボットなどだ。
「セキュリティ技術の高度化が進行する一方で、懸念されるのがプライバシーの問題です。防犯対策としての監視システムがすみずみにまで行き渡るような社会には、多くの人が抵抗感を覚えます。安全とプライバシーの線引きについて今後も議論が必要です」(田中氏)

人的警備には専門性の
高さが求められる

 最新技術でセキュリティシステムが進化する一方で、警備業の原点である「人」も重視されるようになっている。きっかけは2005年の警備業法の大改正だ。

 警備業は1号から4号まで大きく四つに分けられている。05年の警備業法改正では、そのなかで「交通誘導警備」「施設警備」など6種の業務で警備業務検定が設置され、警備会社が提供する業務ごとに、検定合格者の配置が義務づけられるようになった。たとえば幹線道路で交通誘導警備を行うなら、1人以上の検定合格者を置く、といった具合だ。

 警備会社にとっては資格取得費の負担などが悩ましい問題だが、一方で業務の専門化・高度化が進むことになり、サービス品質の向上が期待できる。最後に田中氏は、「最近では、防犯・防災を軸に、幅広い問題に対応できるセキュリティ・プランナーという資格制度も登場しています。ハイテク化と人材の専門性向上という二つの方向で、どう警備業が進化していくのか注目したい」と期待を語った。