自社の商品には詳しくても
トータルでアドバイスしてくれない
また一方で、ある程度運用経験のある投資家からは、次のような批判もよく耳にする。
「金融商品には、それぞれメリットとデメリットがあるはずなのに、メリットしか説明しない」「資産のトータルバランスを考えてアドバイスしてほしいのに、自分のところで売りたい商品しか勧めない」
これらの批判は間違ってはいないが、こうした不満を金融機関の販売員に言ってもそれは仕方がない。私も長年、金融機関で販売の仕事をしていたのでよく分かるが、彼らは悪意を持って顧客をだましてやろうとか、売れ残りを押し付けてやろうなどという考えを持っているわけではない。良い商品だと信じているもの、そう教えられたものをお客さんに買っていただき、喜んでもらおうと真剣に考えている。
しかし、それが必ずしもお客さんにとって適切かどうかは分からない。なぜなら、自社で扱う商品については教育を受け、十分な知識を持っているものの、前述したように他社商品や、他業態の金融商品についてはあまり知識を持っていないからだ。だから、いくら親切な販売員だからといって、彼らは「資産のトータルアドバイザー」とは言えないのである。
これが、洋服を買いに行ったりする場合であれば、いくら店員に勧められても自分の気に入った服や、自分に似合うものでなければ、言われるままに買うことはないだろう。ところが金融商品だと、いとも簡単に販売員の言われるままの商品を買ってしまうといったことが起こりがちだ。
しかしながら、投資というものはやはり自分で勉強し、理解した上で行うのが大原則である。もちろん各商品に関する詳しい情報は、それぞれの金融機関が一番詳しいはずだから、情報を集めるために利用するのは一向に構わないと思うが、最終的な判断は自分で行うべきである。
また、洋服の場合、もし知識がなくて選ぶのに自信がなければ、専門家であるスタイリストにきちんとお金を払って適切なアドバイスをしてもらうこともある。それと同様に、投資するに当たって知識が不足していたり、金融機関の説明がよく理解できなかったりというのであれば、資産運用分野を専門とするFPにきちんと相談料を払ってアドバイスしてもらえばいいだろう(FPの利用の仕方については、別の機会に詳しく説明したい)。
金融機関の言われるままに投資して、良い結果が出なければ不満を言うということでは、いつまでたっても投資で成功することはできない。金融機関が悪いというだけではなく、金融機関の「使い方」も悪いのだと知っておくべきだ。
面倒かもしれないが、大切なお金のことなのだから手を抜くのは禁物だ。自分で勉強して、多少は理解できるようになるまで投資はやらないか、あるいは多少の失敗をしても差し支えないくらいの少ない金額から始めるべきだ。投資によって利益を受けるのも、損失も受けるのも全てあなたであって、誰も責任をとってくれるわけではないのだから。
(経済コラムニスト 大江英樹)



