ただ、マンション建替えが必要だという結論に至ったとしても、その実現はなかなか容易ではない。

 国は将来のマンションストック増加を見越して、02年の区分所有法改正やマンション建替え円滑化法の制定などの環境整備を進めてきた。しかしバブル期以降の経済環境の悪化や不動産価格の下落などで、区分所有者に有利な条件で建替えできる案件は減ってしまったのだ。長谷川氏は指摘する。

「マンション建替えをすると、容積率の余裕を生かした余剰住戸が造れて、それを販売して事業費を捻出し、区分所有者は費用負担なしで新しい住戸を手に入れられる。そういうイメージを抱いている方がかなりいますが、それは景気がいい頃の話。現在では、一部の好立地のマンションを除き、費用負担なしで建替えられるケースは減っいます」

マネジメント方針の下
再生計画を策定する

 マンションの建替え決議には、全区分所有者の5分の4の賛成が必要になるが、個々の費用負担が大きいとなれば、合意形成はスムーズにはいかない。検討課題には挙がっても、10年以上建替えが実現しない例もある。管理組合はマンション再生についてどのように取り組めばいいのか。長谷川氏はこう主張する。

「単なる“管理”ではなく、マンションという資産をどう“マネジメント”していくかが重要です。私が以前から提言しているのが、長期修繕計画の上位概念としてマネジメント計画を策定すること。“時代のニーズに合わせて常にグレードアップを続ける”とか“必要最低限の修繕だけを続け、時代に合わなくなったら建替えを検討する”といったように、管理組合としてのマネジメント方針を決めるべき。その方針の下で、大規模修繕、改修、建替えなどの計画を立てることが大切です」

 マンション再生のニーズは増加する一方で、経済環境の悪化からそのハードルは上がっている。貴重な財産であるマンションの将来を左右する鍵は、管理組合による主体的な“マネジメント”にあるといえそうだ。