後継者不在の場合は
M&Aで"攻めの売却"

 近年はまた、少子高齢化の中で後継者が親族や社内に見つからない場合、他の事業会社やファンドに株式を売却するM&Aで、経営を継続するケースも増えている。中には後継者がいても、能力不足を見越して会社の永続のため、売却を決断することもある。

 「経営者は、会社を売却することに後ろめたさを覚えるかもしれませんが、最終的には事業規模が大きな企業に売却するので、結果的に会社の信用力や資金力が増します。採用面でも有利になるなどメリットも多く、私たちは"攻めの売却"と呼んでいます。会社の永続と成長を考えるならば、M&Aという発想も大事だと思います」

 資本政策に関する専門的なノウハウを持つMURCは、単なる自社株対策に終わらず、経営承継に係る課題解決をトータルでサポートできる強みを持つ。

 M&Aについては三菱東京UFJ銀行のM&A専門部署との協働で幅広い業種のお客さまに対し、質の高いアドバイスを提供している。

 「経営承継にはファイナンスが絡むことも多く、私たちは三菱UFJフィナンシャル・グループの一員として幅広いサービスを提供できます。またコンサルティング会社として人事制度や業務改善など、経営に関する多様な専門家をそろえています。いうなれば、経営に資する戦略的な経営承継をワンストップで実現できるのが、私たちの強みなのです」

 経営承継は、時として会社の構造を大きく変えることになり、従業員の理解を得ることが大切な要素となる。人を見る目を持つ中堅・中小企業の経営者に信頼される、高い専門性と誠意を持つコンサルタントをそろえていることも、MURCが評価される部分なのだ。

事例1製造業A社
持株会社制へ移行し株主を集約、グループの効率化を図る

 A社の株主はもともと従業員や役員だったが、相続などで分散が進んでいた。MURCが相談を受けたとき、株主は100人以上存在し、経営に関わらない株主が多かった。またグループ各社の経営は各社の社長に任されており、業務や投資の重複など経営の無駄も目に付いた。

 そこで持株会社の設立を提案、「会社は役員や社員自らのものだ」という創業時の理念に回帰して、従業員や役員などの持株会をつくり、株主数の大幅な集約化に踏み切った。オーナー家の株主でさえ、会社の経営と関係のある一部の人に絞った。その一方で、グループ内の持ち合いを解消し、各社を持株会社の100%子会社へ。似通った事業は集約して、グループ経営を効率化し、グループ再編を実施しやすい体制にした。

 持株会社の設立で、株価問題も解消。結果的に事業の発展と承継が両立し、「息子へ株を譲渡したい」という先代の希望がかない、その後A社は順調に業績を伸ばしている。

事例2小売業B社
持株会社の機能を強化、公益財団法人を設立して自社株対策

 B社では既に持株会社があったが、中身がなく形だけの存在だった。経営承継にあたって、その持株会社を戦略的に使うことを提案。グループが所有する不動産や資金を集約し、グループの経営効率を向上させた。同時に持株会社主導で、部門別業績管理制度の見直しや、連結決算・連結納税制度の導入を行い、グループ経営の仕組みを整備した。

 それに合わせて公益財団法人を設立し、自社株の一部を同法人に寄付。B社の事業領域でもある特定事業分野への助成金事業や、奨学金事業をスタートした。寄付した自社株は相続財産と完全に切り離されるので、相続税負担も軽くなる。何よりも、企業としてのCSR(社会貢献)活動と経営承継を両立できるのが公益財団法人を活用する大きなメリットで、非上場の大手企業では、こうした公益財団法人の活用が当たり前となっている。

問い合わせ先
三菱UFJリサーチ&コンサルティング
www.murc.jp