有名企業が自社製品の素材として
アクアチタンを採用する理由

ANAでは「機内という特殊な環境で少しでも疲れをとり、リラックスしていただきたい」という考えから、長距離・中距離線で毛布や枕などのアメニティに採用している。ファーストクラス提供の竹繊維のひざ掛けは何度も試作を繰り返し完成した逸品。

 金属をナノレベルで水の中に分散させる水溶化メタル技術は、京都に本社を置くファイテン独自の技術だ。この技術を利用すれば、繊維の一本一本にまでチタンを浸透した布地をつくることができる。ファイテンは先に紹介したネックレス「RAKUWA」シリーズの他にも、多くの企業とコラボレーションしてアクアチタンを使用した製品を世に送り出している。

 全日空は、毛布、枕などの機内アメニティにアクアチタン製品を採用した。その理由について、同社商品戦略室・阪東慶子氏は「昨年からスタートした私どものサービスブランド『Inspiration of Japan』の『新しい日本の技術を世界に紹介したい』というコンセプトにぴったりでした」と語る。アクアチタン製品の機内販売もしているが、こちらも評判がよく当初より取扱品目は増加しているという。

デザインや布地にこだわりを持ち、その質の高さにも定評のあるコナカ。10月からパターンオーダースーツの裏地にもアクアチタン加工のものを選べるようになった。ワイシャツは動きやすいニット素材のものもあり、5145円という手頃な価格で試せる。

 また、この春から裏地にアクアチタン加工を施したスーツの販売をスタートしたコナカ総務部・土屋繁之氏も「売上は着実に伸びています。お客様からの関心も高く、リピーターの方もいらっしゃいます」といい、秋冬物からさらにラインナップを拡充したのだそう。「機能性衣料のレベルはこの数年で格段にアップしました。『シワになりにくい』『吸湿速乾』といった機能は、今では当たり前。もっと新しい機能、たとえばストレスにさらされるビジネスマンに向けたスーツはどうか、などと考えていました」。

 このほかにも、靴、スポーツウェア、家具の素材に採用されるなど、アクアチタンのビジネス展開は広がりを見せている。

再生医療をはじめとする
新たな分野への応用も

アクアメタル研究会では、前回まで(第1回、第2回分)のシンポジウムの成果をまとめたレポートを発行。医療や健康など、さまざまな分野で進行している研究の成果が蓄積されつつある。

 今回のシンポジウムでもっとも画期的だったのは、UCLA教授、小川隆広氏が発表した、アクアチタンのインプラント治療への応用についてのレポートだ。小川氏によれば、アクアチタンでコーティングしたチタンは通常のものよりも骨芽細胞との結合に優れ、細胞の増殖スピードも20%増だったという。小川氏は近いうちに実証実験を行い、将来的にはデンタルインプラントへの応用を実現したいとしている。

 これまで、主に健康やスポーツの分野で利用されてきたアクアチタンだが、今後はインプラントなど再生医療の現場での活用も期待される。研究が進むにつれ、この新素材が持つ可能性はますます広がりそうだ。