コミュニティが支える
高齢者の住まいが理想
もっとも住まいの選択肢は増えても、理想の“終の棲家”を選ぶとき、考えなければならない問題がある。「介護の状態にもよりますが、大切なのは、高齢者として自分がどのように生きていくか。ライフスタイルを見つめ直すことが必要なのです」(小山さん)。家族であれば、その家族が望む暮らし方を実現できる住まいが望ましい。
ある資料(平成22年度東京都福祉保健基礎調査「高齢者の生活実態」東京都福祉保健局調べ)によれば、都内の高齢者の約7割が「現在の住宅に住み続けたい」と希望しているという。今後、地域での24時間対応の訪問介護看護サービスなどが充実してくれば、一人暮らしであっても自宅で介護や医療サービスを受けながら暮らすという選択肢も、もちろん有効になる。
最終的に決め手となるのは、人と人とのコミュニケーション。介護する側とされる側の相性がよければ、そこは安息の住まいとなる。そのためにも、介護施設や高齢者向けの住宅を選ぶときは面倒がらずに、納得するまで何度も説明を聞き、現地に足を運ぶことが大切だと小山さんは言う。
「私が考える理想の介護施設や高齢者向けの住宅とは、地域のなかで生き生きと暮らせる“開かれた場”です。施設見学のときは、地域での評判を聞くこともポイントの一つになります。
ヨーロッパにはリタイアした音楽家が集って暮らす住まいがあったり、米国には高齢者しか住んでいない町があります。そこに共通しているのは、自分の意志で晩年の生き方と住まいを選んでいるという点。長寿化する日本では、65歳以降のセカンドライフがさらに長くなります。高齢者の住まいのあり方も多様化するなか、まず自分がどのような生き方を選択するのか、主体性をもって考える必要があると思います」