特に筆者は、経営分析の世界で人気のある「成長性分析」に、改善の必要があると考えている。2011年10月12日付の日本経済新聞「大機小機」によれば、2011年の年初で「80円を突破する円高を予想した経営者は一人もいなかった」とあるように、将来予測は必ずハズレるからだ。

 必ずハズレる成長性分析を、机上でいじくり回すのは時間の無駄である。他に方法はないだろうかと思案していたときに、ヒントを与えてくれたのが、日銀短観の業況判断DIであった。

 ただし、日銀の向こうを張って、筆者がアンケート調査を実施するわけではない。上場企業は、決算短信や有価証券報告書という形で、格好のデータを提供してくれている。これを利用して、各社が将来に対してどれだけ「強気・弱気」にあるかを読み取ってみることにしよう。

 主に利用するのは、決算短信の表紙の最下段で開示される「連結業績予想」である。貸借対照表や損益計算書の仕組みをまったく知らない人であっても、この「連結業績予想」の欄だけは必ず見るという人気者だ。

 当たるも八卦当たらぬも八卦の業績予想だが、だからといって侮ってはいけない。順を追って、業績予想を理解するための予備知識を紹介していくことにしよう。

ヤマダ電機は
リーマン-ショックの影響を受けなかった?

 家電量販店3社のデータをすべて掲載していては本コラムが膨大なものとなるので、特徴のある図表を示していくことにする。まずはヤマダ電機について、本連載でお馴染みのSCP分析(Sale-Cost-Profit:タカダ式操業度分析)に基づく解析結果を〔図表 1〕に示す。

 〔図表 1〕の中央にある黒色の線は、実際売上高の四半期移動線である。10/3(10年3月期)に2兆円を突破している。その上にある青色の線を「予算操業度売上高」といい、ヤマダ電機にとって量産効果を最も発揮する売上高となる。さらにその上にある赤色の線を「最大操業度売上高」といい、実際売上高がここに到達すると、ミクロ経済学で有名な「利潤最大化」を実現することができる。

 青色と赤色に挟まれた領域を「タカダバンド」といい、黒色の実際売上高がこの領域に収まるのが望ましい。2008年以降、業界最大手のヤマダ電機といえどもなかなか手が届かない状況にある。

 〔図表 1〕を見渡すと、ヤマダ電機の場合、リーマン-ショックの反動や家電エコポイント制度の恩恵を、ほとんど受けていないように見える。しかし、「鴨の水掻き」と同じで、水面下ではかなりの動きがあったようだ。それを徐々に解明してみよう。

非現実的な仮定に基づくCVP分析は
涙を誘う分析手法だ

 〔図表 1〕の上方にある橙色の線を「収益上限点売上高(レジスタンス-ライン)」といい、万が一、実際売上高がこれを超えると赤字に転落する。伝統的な経営分析や管理会計では、「利益なき繁忙」や「増収『減』益」という現象を説明することができなかった。SCP分析(タカダ式操業度分析)では、橙色のレジスタンス-ライン近辺がそれを証明する。

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家電量販店は本当に「変動費型ビジネス」か

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