〔図表 9〕では、ワザの指標として筆者オリジナルの「戦略利益」という概念を使用している。これは拙著『実践会計講座/原価計算』でも紹介しているように、次の〔図表 10〕の式で表わされる。

〔図表 10〕第1項の「年間利益」については当期純利益を用いる。税効果会計が導入されて以降、営業利益や経常利益を用いるメリットはほとんどない。右辺第2項の「基準固定費」は〔図表 2〕の上方に描かれる赤色の線に基づいている。右辺第3項は〔図表 7〕の「実際操業度率」に基づいている。
〔図表 9〕から浮かび上がる特徴をいくつか指摘しておこう。1つめは、赤色の「対前年同月との戦略利益比」がすべてプラスで推移していることだ。ヤマダ電機は、安定成長を続けていることを表わしている。〔図表 1〕で示したSCP分析(タカダ式操業度分析)の図表に大きなブレがないことと符合する。
ところが、〔図表 9〕にある黒色の線は08/9(08年9月期)以降、マイナス状態に陥っている。10/3(10年3月期)にプラスに転じたものの、11/3(11年3月期)は東日本大震災によって▲30%にまで落ち込んでいる。これはリーマン-ショック以降、ヤマダ電機の「投資活動」が冷え込んでいる証拠だ。家電エコポイント制度は「消費」を促す効果はあっても、企業の「投資」を呼び込むほどの効果はなかったということだ。日銀短観では、そこまでの解明はしていない。
エス-バイ-エル買収は吉とでるか
連結業績予想から読み解くヤマダの強気と弱気
企業の投資活動が盛り上がらないのは、企業自身が将来の先行きに対して自信を持っていないことを示している。それを次の〔図表 11〕で示す「業績予想ベクトル」というものを使って調べてみた。
基礎資料となるのは、決算短信の最下段で開示されている「連結業績予想」である。なお、〔図表 11〕では、決算短信後の上方修正や下方修正は加味していない。

〔図表 11〕を調べるにあたってはまず、SCP分析(タカダ式操業度分析)から「あるべき利益の姿」を導く。現状のコスト構造の下で、企業が計画している売上高が達成されるなら、この程度の利益は実現されて当然だろう、という「巡航速度の利益」である。
次に、決算短信の「連結業績予想」で開示されている利益(営業利益や当期純利益)との相対的な関係を百分率で表わす。プラスであれば企業は先行きに対して強気であり、マイナスであれば弱気を表わす。それが〔図表 11〕の左にある縦軸として表わされる。あとは筆者自製の『原価計算工房ver.6』によって解析処理を行なった。なお、2012年春には「業績予想開示」の様式が変更される可能性があるので注意されたい(日本経済新聞、11年10月14日付)。
〔図表 11〕を見ると、ヤマダ電機の場合、2009年は家電エコポイント制度の追い風を利用して強気の予想をしていたようだが、2010年以降はまったくの弱気である。自民党の麻生政権から引き継がれてきた制度も、企業の強気を持続させる政策効果はなかったようだ。プラスに転じない限り、企業の「投資」が増えることはないだろう。
経営基盤の弱体化を余儀なくされる家電量販店が多い中、ヤマダ電機は11年10月、中堅住宅メーカーのエス-バイ-エルを傘下におさめることによって、「投資」を拡大する方向へと舵を切った。2011年後半以降、ヤマダ電機は強気に転じるのかどうか。注目されるところだ。



