出店意欲はあるのに、在庫水準は横ばい
浮かび上がる家電量販店の「先行き弱気」

 「SCP基準固定費」の内容は、駐車場や店舗などの不動産にとどまらない。在庫もその一部を構成する。家電量販店は、顧客からの個別注文に応ずるものではなく、店頭や倉庫にどれだけ多くの商品を揃えておくかも重要な戦略だ。それが在庫の中に固定費を抱えることになる。ケーズHDのデータ〔図表 3〕で確認してみよう。

 〔図表 3〕にある赤色の線は、ケーズHDが実際に抱えている在庫水準である。2009年以降、1000億円前後で推移している。青色の線は、拙著『実践会計講座/原価計算』151ページで紹介している「ランニング-ストック方程式」によって導き出した「最適在庫」だ。赤色と青色の差が、過剰在庫を表わす。

 拙著『実践会計講座/原価計算』148ページの〔図表5-23〕では、運転在庫・安全在庫・政策在庫を紹介している。〔図表 3〕にある「最適在庫」は安全在庫と政策在庫から構成され、これが在庫の固定費となる。赤色と青色の差が「運転在庫」になる。販売機会を逃さないためには、これだけの「過剰在庫」を抱える必要があるというわけだ。

 エディオンもケーズHDと同じく、実際在庫の半分が最適在庫から構成されていた。ただし、ヤマダ電機は10年3月期より、在庫を圧縮する改革に取り組んでいる事実を紹介しておこう。

 2009年以降、ケーズHDに限らず、エディオンやヤマダ電機も在庫水準はほぼ横ばいになっている。下記〔図表 4〕が示す通り、出店意欲に衰えはないものの、在庫水準が横ばいということは、実質的に在庫の圧縮を行なっている姿が浮かび上がる。家電量販店は総じて「先行き弱気」の姿勢が伺える。

 なお、家電量販店が抱える基準固定費は、店舗ごとにスクラップ&ビルドが可能な「分割可能な固定費」であることを指摘しておく。これは第60回(マクドナルド編)ですでに紹介した。製造業の基準固定費が「分割不能な固定費」であることと対照的だ。工場や生産設備が、容易にスクラップ&ビルドできるわけがないからだ。

 分割可能固定費と分割不能固定費の分類は、SCP分析(タカダ式操業度分析)において可能になる。CVP分析から導かれる固定費はその額が小さすぎて、分割可能か分割不能かといった分類はできない。

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