チームプレーから
生まれる「気づき」

 当日の参加者は、入社2~5年目の若手社員35人。参加者は8チームに分けられ、自己紹介のあと、吉川教授によるオリエンテーションが行われた。

 演習の数は午前・午後合わせて三つ。いずれも、マンガ教材を読んでチームで議論し、課題に答えてプレゼンテーションやロールプレーを行うという形式である。

 演習1は、老舗スーパーの販促活動がテーマ(下絵参照)。マンガの登場人物の行動を観察し、「こういう態度はいけない」と思った点をすべて列挙。チームごとにその理由と修正案を話し合い、模造紙に要点をまとめてプレゼンテーションを行った。

 同じ教材を使用しても、そこから読み取る教訓は、チームによって千差万別である。互いの発表を聞いて比較することで、自分たちの考え方が妥当かどうかを客観的に検証。最後に吉川教授が各チームのプレゼンテーションを論評し、若手社員が陥りがちな落とし穴や、組織で働くためのポイントについて、さまざまな角度から「気づき」を与えていく。

 午後も引き続き、二つの演習が行われた。演習後には「アクションプラン作成」が行われ、参加者ごとに今後取り組むべき目標を作成。ワークショップは盛況のうちに幕を閉じた。

 参加者からは「チームで働くことの意義を再認識できた」「マンガ教材なので感情移入しやすかった」「さまざまな場面で考えながら行動する大切さを知った」といった声が寄せられた。なかには「普段上司から言われていたことの意味が、腹の底から理解できた」という感想もあった。また、日頃接することのない他社の同年代の社員と共同作業を行うことに「刺激になった」という声も多く、非常に好評だった。

 今回のワークショップを共催した綜合スタッフグループでは、これまでEmployability(雇用可能力)に注目した人材教育に取り組んできた。同グループ企画運営室の作馬誠大氏は、「研修とは現場で実践できて、初めてその成果があるといえます。『Employability』という非常にソフトなテーマもマンガ教材を使うことで具体的に理解し、現場での行動イメージが持てるようになります。若手社員はもちろん管理職の方にもその効果を実感していただきたいです」と語った。

演習1で使われたマンガ教材の1コマ。地域密着型のスーパー「スーパーダイヤ」では、店長の発案で、報奨金と引き換えに販促のアイディアを広く募集することとなった。新入社員の佐野裕太は、店頭での果物の試食販売を上司の青果担当部長に提案。しかし、上司や副店長、ベテランのパート女性は、佐野に別の業務をこなすよう指示する。独断専行で試食販売の準備を進める佐野。幸い試食販売は顧客に好評だったが、佐野は致命的な失敗をする。上司が倉庫によけておいた品質の悪い桃を、それと知らずに店頭の棚に戻してしまったのだ。顧客からのクレームに平身低頭でお詫びする上司。それを横目で見ながら、佐野は「売ったほうがお金がもらえるし」と呟くのだった。