少子高齢化などを背景に国内市場が縮小する中、国内の製造業や流通業、さらにはサービス業といった各業種の企業にとって、海外市場を目指したビジネスのグローバル展開をなお一層加速させていくことが切実なテーマとなっている。それに向けて、日本企業はどのような経営課題を抱えており、またその解消に向けたアプローチとはいかなるものか。高度な専門的知識とスキルを有するプロフェッショナルを擁し、監査、税務、アドバイザリーの3つの分野を中心に顧客のビジネスをグローバルな規模で支援するKPMGの中で、デジタルトランスフォーメーションをはじめとしたアドバイザリーサービスを提供するKPMGコンサルティングの松本剛氏と、日本オラクルの桐生卓氏の対談を通して考察する。

意思決定のスピード感の欠如が
グローバル市場での成功を阻む

――ビジネスのグローバル展開をいかに加速させていくかが、企業がさらなる成長を目指すうえでのカギを握っているものといえますが、そうした中、最近の企業の動向についてどのような変化が見られますか。

【エグゼクティブ・インタビュー】KPMGコンサルティング × 日本オラクルビジネススピードにかかわる意識変革がグローバル展開のカギKPMGコンサルティング株式会社
執行役員 パートナー
松本 剛 氏

2011年KPMGマネジメントコンサルティング(現KPMGコンサルティング)に入社。金融機関やライフサイエンス企業に対するグロ―バルプロジェクトに取り組み、M&Aを起点にしたガバナンス・制度設計、システム統合、アナリティクス活用による経営の可視化に取り組む。マネジメントコンサルティング部門統括。

松本:日本企業のグローバル展開にかかわる最近の変化としては、例えばアフリカなど、これまでとは異なる新たなエリアに進出していこうとする動きが活発になってきています。製造業であれ、商社であれ、そうした企業は、それらのエリアについての知見なり、ノウハウを持っていないということで、当社にサポートを求められるケースが増えています。
 その一方で、ビジネスのグローバル展開の目的にも大きな変化が見られます。例えば従来、グローバル展開の狙いといえば、主にトップライン(売上高)を伸ばすことにあったものといえます。最近では、株主からのプレッシャーが強くなっていることなどもあってか、ボトムライン(利益)に対しての意識というものが強くなってきている傾向にあります。要するに、単に進出するだけではなく、進出先の市場で成功を納めなければならないという使命が企業に課されているわけです。

――そのような状況にあって、企業が新たに直面している課題とはどのようなものでしょうか。

松本:1つには、日本企業の場合、基本的に意思決定が遅いという問題を抱えています。例えば、最近、日本の大手企業と現地のベンチャー企業の間の協業に関するプロジェクトを支援させていただきましたが、日本企業の側で稟議を通すには、経営会議で承諾を得る必要があり、仮にそれが叶わなければ、また次回の経営会議にかけるというようなかたちで、4カ月や5カ月くらいはすぐに過ぎてしまうという状況でした。ですが、こうした日本企業の時間感覚は、現地のベンチャー企業にしてみれば到底受け入れ難いものがあります。せいぜい1カ月単位での意思決定を行わないと、せっかくのビジネスチャンスも競合他社に出し抜かれてしまうことになります。

桐生:おっしゃるように、日本企業の意思決定のスピードの問題はわれわれも感じているところです。それをシステム的な課題で捉えれば、2000年代の初頭以来、国内でもグローバル企業の間でERPの導入が進み、経営に資する、いわば"足腰"が整備されてきたわけですが、実際のところグローバルな規模で見ると、その導入形態がうまく機能しているところと、していないところがある。そうした問題が、いまおっしゃった意思決定スピードの遅さなどにからんで顕在化してきていて、そういった企業ではシステムの再構築などに向けた検討が進んでいるという状況もあります。

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