主催者であるJR東日本の執行役員・表輝幸事業創造本部副本部長は、人手不足を解決するのに有効なビジネスモデルとして「スーパーワンダーレジ」を高く評価する。

JR大宮駅で行われた「JR東日本スタートアッププログラム」テストマーケテイングの初日、挨拶をするJR東日本の執行役員・表輝幸事業創造本部副本部長

「当社は首都圏だけでなく、鉄道会社として広域に店舗サービスを展開していきたいと考えています。ところが地方では、人手不足や人件費の上昇で運営が難しい。サインポストのレジレス店舗ならば、収益が少ない所でもサービス展開ができる可能性があります。

 また首都圏でも、住民の少ない東京駅などでは、やはり働く人が集まりにくいという課題があります。スーパーワンダーレジは無人店舗なので、始発から終電までフルに営業でき、機会損失を生み出さない。結果的に、従業員の働き方改革にもつながります。

 今回のテストマーケティングの目的は、実際にお客さまに使っていただくことで、さまざまな意見やニーズを汲み上げること。AIを利用した技術なので、精度を上げていくことが課題になると思いますが、少子化が進む中、有効なビジネスモデルとして期待しています」

 サインポストは、金融機関や行政機関にシステムソリューションを提供するベンチャー企業。数年前からイノベーション事業としてAIのディープラーニングを応用した製品開発し、電気通信大学との産学連携では、AIを搭載したレジスター「ワンダーレジ」を開発した。

 これはカメラを搭載した箱型のレジで、来店客が並べた商品をレジ内のカメラで読み取り、同社が独自に開発したAIがレジ内部の商品を自動識別、商品点数と合計金額を瞬時に計算するというものだ。バーコードなどのICタグを用いず、複数の商品を高速に一括で精算できるため、従来のレジに比べて精算時間を格段に短縮することができる。

AIを搭載した「ワンダーレジ」。レジに商品を置くだけでAIが商品を自動認識し、電子マネーで決済ができる

 同社の蒲原寧社長によれば、開発のきっかけは「公共機関にはETCやICカードなどの自動改札機があるのに、なぜレジ前では長蛇の列ができてしまうのか」という素樸な疑問だったという。「ワンダーレジ」は今年の夏から、電気通信大学内の生協において実用化に向けた実証確認を開始しており、「ディープラーニングによって商品を識別する精度はほぼ100%に近づいた」(蒲原社長)という。

 いうなれば、「スーパーワンダーレジ」は、その「ワンダーレジ」の拡大版。コンビニエンスストアをはじめ、スーパーマーケットやディスカウントストアなどの大型店舗における人手不足解消や、買い物客のレジ待ち時間の短縮を目指している。

「スーパーワンダーレジを一般消費者に解放するのは、今回が初めて。想定には限界があるので、実際に使っていただくことでさまざまな改良点が見えてくるはずです。

 JR東日本様との協業では、スーパーワンダーレジの活用で、人手不足や待ち行列が課題となっているNewDaysなどエキナカ店舗への展開や、人手不足の新幹線車内販売、地方のエキナカ店舗の無人開業などを支援できると考えています」と蒲原社長は意気込みを語る。

 サインポストは11月21日に、東京証券取引所マザーズ市場への上場を果たした。ワンダーレジ、スーパーワンダーレジの事業化にあたって、販売システムや保守の拠点が必要になることから、今後は事業提携やオープンイノベーションなども積極的に検討していく予定だという。

 人手不足に悩む店舗経営において、同社が開発したAI技術はレジの風景を一変することになるのだろうか。その大きな第一歩が踏み出されたのは、間違いない。

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サインポスト株式会社
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