2010年が“MICE元年”
背景にあるアジア諸国の台頭

 もともと日本では、1994年にコンベンション法が制定され、全国52の都市が国際会議観光都市として認定を受け、各地方都市にコンベンション・ビューロー等が発足するなど、国際会議の誘致に取り組んできた。特に近年はインバウンド(外国人の訪日旅行)の促進という観点から、MICEを積極的に推進するようになっている。

 観光庁のMICE推進アクションプランが策定されたのは2009年、翌10年を“Japan MICE Year(MICE元年)”と位置づけ、開催・誘致に向けて国の支援が本格的にスタートした。今年、東日本大震災でキャンセル等の影響は受けたものの、推進する姿勢に変わりはない。特に日本政府観光局(JNTO)は「オールジャパンの代表として、諸外国に向けて総合セールスを積極的に展開している」(千葉氏)。

 日本がMICEに力を入れるようになった背景には、経済成長著しいアジア諸国がMICEの誘致に向けて積極的に動き出しているという事実がある。

「特にシンガポールは、90年代後半から国家戦略的にMICEを誘致しており、MICEのなかでも大きな比重を占める国際会議の開催件数では、07年にパリを抜いて都市別1位に躍り出ました。10年4月にはウォーターフロント地区に、国際会議展示場やホテル、ブティック、カジノなどエンターテインメント施設を含む巨大複合商業施設、“マリーナ・ベイ・サンズ”を開業するなど、観光立国への意気込みを強く見せています。また韓国や中国の追い上げも激しく、近年では台湾でも動きがあります」(千葉氏)

“もてなしの心”が
日本のプレゼンスを高める

 このような状況のなか、日本がMICEの開催地としてプレゼンスを高め、ホスト国として優位に立つためには、何が必要なのだろうか?

「MICEの開催地のポテンシャルは、必ずしも大都市や首都にあるとは限りません。大規模施設がなくても、たとえば“ユニークべニュー”と呼ばれるような、地域独特の会場を用意することで差別化は図れます。もとより日本には風光明媚な自然や、京都・奈良に代表される史跡、豊かな物産や食文化など、質の高い観光資源がある。そして日本流の“もてなしの心”、他国にはない極上のホスピタリティがあります。クオリティの高いMICEを目指し、規制緩和を含めて官民が連携しながら積極的にプロモーションしていけば、日本がMICE市場で優位に立てる可能性は大いにあると考えています」(千葉氏)

 国別の国際会議の開催状況(ICCA・10年)を見ると、日本は現状、米国、ドイツ、スペイン、英国、フランス、イタリアに次ぐ7位(305件)。MICEの誘致競争力は、国自体のプレゼンスや魅力と密接にかかわっている。日本には物価高や言葉の壁などのハンディがあるが、本格的な振興はまだ始まったばかり。MICEは観光ビジネスのなかでも費用対効果が高く、国益においても重要な事業となるだけに、今後の取り組みが期待される。