ビジネス環境が大きく変動するなかで、人材の活用法も変化してきている。非正規労働者の活用もその一つだが、今後は社員とのバランスの調整に加えて、高い価値を生み出すための教育・育成も重要になると見られる。
国内外の経済情勢は、激しく変化している。2011年に入ってからも東日本大震災をはじめ、欧州諸国の債務危機やイスラム諸国の政変、タイの洪水などの出来事が日本企業の活動に大きな影響を与えている。
大きく変動するビジネス環境のなかで、企業経営者は繊細な舵取りを求められている。とりわけ重要なのが人材だろう。既存の人材の最適配置を進めつつ、不足している場合には時期を見ながら増員する必要がある。
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厚生労働省の「労働経済動向調査」によると、08年の世界金融危機のあと、一気に人材の過剰感が増したものの、09年下期からは急速に過剰解消が進行。人材不足と考える企業が増えた。大震災を受けていったんは人材需要が減ったが、11年8月の調査では再び不足傾向が強まっている(図)。その背景には、被災地域のサプライチェーン復旧や復興需要の増加があるものと見られる。
こうしたなかで、企業は社員と非正規労働者の最適なバランスを模索しながら、人材確保に向けて動き出している。日本の雇用規制は複雑で、政府による改編の動きもある。担当部門はこうした規制を考慮しつつ、事業部門の要求に対応しなければならない。
特に非正規労働者の場合は求められる人数が時期によって変動するケースも多く、人材派遣会社の役割が大きくなっている。ビジネス環境の変化に応じて生産を伸縮させるためには、固定的な社員雇用だけに頼るわけにはいかない。実際、厳しい雇用規制の影響もあって、00年前後から日本企業は一貫して非正規労働者の比率を増やしてきた。
ただ、非正規労働者に関していえば、企業の視線は“量”の確保に向かいがちで、“質”は後回しという傾向があったのではないか。非正規労働者を含めた人材のレベルアップは、企業を含めた社会全体の課題である。
経済環境が変動することは避けがたい。変化への柔軟な対応力を備えたうえで、高い価値を安定的に生み出すための人材育成のあり方について、企業は真剣に考えるべき時期ではないだろうか。