自分の声は嫌いでも
親しい誰かは欲している
もっとも、気になるのはこの技術の使い道。音声心理学者の山崎広子氏の調査によれば、日本人の8割は自分の声を嫌っているという。そんな中で東芝デジタルソリューションズは、一体どこにビジネスの勝機があると考えたのか。
将来的な用途例について、東芝デジタルソリューションズ・RECAIUS事業推進室コエステーション事業プロジェクトリーダーの金子祐紀氏はこう説明する。
「例えば恋人からSNSのメッセージが届いたとして、それを恋人自身のコエで文章を読み上げたり、逆に相手のスマホで自分のコエを使ってもらうこともできます。大好きな孫のコエでスケジュールやニュース記事を読み上げるのもいいでしょう。もし何かしらのオンラインゲームとコラボできれば、自分のアバターにコエを乗せて相手とコミュニケーションを取れるようにもなります。もちろんオレオレ詐欺対策やセキュリティーの観点から、自分のコエを第三者が無断で使うことはできないようにもなっています」
なるほど、どれだけ嫌いな自分の声でも、そのコエを欲してくれる人に向けてのサービスということなのだろう。
山岸氏によれば、こういったビジネスはこれまで、大企業の参入が少なかった分野でもあるという。
「世界的な巨大企業であるGoogleやAppleも、音声認識・合成技術の研究や製品化に熱心ではありましたが、コエステーションのように個人から声を集めて個人が使うというビジネスはやっていませんでした。おそらく大企業が参入するには、市場規模が不透明なことも理由にあったと思います。しかし間違いなくニーズは高まっているので、日本企業にしてみれば世界に向けたビジネスチャンスといえるかもしれませんね」
人間のアイデンティティである「コエ」に特化したビジネス。その戦国時代が今、始まろうとしているのかもしれない。



