遠山周平

第8回 Feb.15.2012 遠山周平

強く優しくを理想の男性像とする、
エシカルドレッシングの薦め

著者・コラム紹介
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 レザーはなめし工程によって2種類に分けられる。一つは植物の『渋』を使ったベジタブルタンニンなめし。もう一つは塩基性硫酸クロムを使うクロムなめしである。

 エシカルドレスの観点で考えるなら、お勧めは環境に優しいベジタブルタンニンなめしのレザーだ。しかし今どきの軽く薄いレザーは、クロムなめしのほうがはるかに簡単で見た目がいいものが出来る。ベジタブルタンニンなめしは、なめし工程だけで数ヵ月の手間がかかるうえ、ナチュラルな風合いを生かした革はどうしても厚手で重くなる。

 だが軽小短薄がもてはやされる時代に、あえて重いバッグを持つのもクールではないか。たとえばオールブラックスの一員のような大男が重厚なブライドルレザーのダレスバッグを持つのは当たり前。しかしスレンダーな日本人がそれを片手で軽々と下げてインターナショナルな職場に登場したら、「なりは小さいけれど、あの日本人なかなかやるわい」と、思われるのは間違いない。

 ビジネスは戦場。はったりや見映えも重要である。

 昨年、バッグの展示会で一目ぼれしたレザートートバッグを紹介しておこう。SLOWというバッグブランドのBONOシリーズの定番として展示されたこのバッグは、栃木レザー(日本の著名タンナー)に特注したフルベジタブルタンニンレザーを使用している逸品。

 SLOWのデザイナーは、優れた素材だけが秘める革のパワーを充分生かすために、バッグの開口部の上端をあえて切り放したままのワイルドなデザインした。これがじつにイイ。しかも使いやすさを考えて、内側に着脱自在のリネン製巾着袋を内蔵してあるから、バッグをクロークルームに預けるときなども中身が見られる心配がいらない。

 このバッグ、使うたびに表面を手でいとおしく撫でてやると風合いが日増しによくなっていく。これぞ本物。男が持つべき道具だ。

取材協力/井野屋/SLOW  03-5798-2663
 

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遠山周平 [服飾評論家]

1951年、東京生まれ。雑誌編集者、新聞記者を経て服飾評論家に。豊富な経験と知識を元に、“自ら買って、試して、書く”を信条とする。著書に『洒脱自在 おとなとしてシックに服とつきあう本』(中央公論新社)など。趣味の裁縫技術を生かし、捨てないお洒落生活を実践中。

 


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