管理会社に
任せ切りはダメ

 震災関連以外にも、同センターには年間約1万件の相談が寄せられる。「区分所有法の解釈」「役員の選任・解任」など、マンション管理特有の法律やルールに関する相談が多い。そのなかで常に一定の相談件数があるのが、マンション管理会社への不満や苦情、リプレース(管理会社変更)に関する相談だ。

 かつてマンションの管理は、新築分譲の際に決められていた管理会社に、半永久的に任せるのが普通だった。しかし昨今では、「管理会社は選べる」という認識が広がり、リプレースに積極的な組合も増えている。

「管理会社を替えて管理委託費を下げたいという相談は多くあります。それで管理費が下がったとしても、すべてが成功しているわけではありません。管理費は下がったが、以前よりサービスが悪くなったという失敗例もよく耳にします」(山本部長)

 同センターがアドバイスしているのは、リプレースを検討するにしても日常の管理を改善するにしても、まずは正しい知識を身につけたり、マンションの現状を把握したりすることだ。たとえば、建物の状況はどうなっているのか、長期修繕計画や管理費会計は適正か、などの情報を日頃からきちんとまとめておく必要がある。それはリプレースの際の参考資料になるし、管理の継続性を維持することにもつながる。同センターが提供しているマンション履歴システム「マンションみらいネット」を利用するのも一つの手だ。

 状況把握を怠ったことで大きな問題に発展しがちなのが、金銭の問題だ。経済的な事情から管理費や修繕積立金を滞納する区分所有者は増えている。管理会社の多くも滞納対応は行うが、そのレベルには差があるし、最終的には管理組合の問題として処理するものだ。気づいたときには問題が悪化し、対処できなくなるような事態は避けたい。

「すべて管理会社に任せ切りにしてはいけません。管理会社の業務をチェックしながら、管理組合としても自主的に動くことが大切です。また一方で、良質なコミュニティの形成も重要です。問題が起きたとき、居住者同士の信頼関係があれば解決は早いですから」(山本部長)

 全国のマンションストック戸数の増加に伴い、建物の高経年化と居住者の高齢化が進んでいる。これからの管理組合には、管理会社や専門家と連携しながら、よりレベルの高い運営が求められていくことになる。