その魅力はやはり再建を目指す真摯な姿です。ソーシャルメディア上で実名と顔を明かすのはなかなか勇気のいることですが、JALの社員たちはFacebook上で名前と顔を出して顧客目線で対話をしています。そうすることで「顔の見えないブランド」が「人柄や姿勢がはっきりと感じられるブランド」へと変化しました。

 また、これまでブランドの担当者がソーシャルメディア上に登場して個性を発揮するケースはいくつかありましたが、JALのFacebookページでは企業コミュニケーションに直接関係のない部門の社員たちが次々と登場します。昨年4月の立ち上げからまだ1年足らずにもかかわらず、すでに約500人の社員がこのFacebookページに登場しています。ここからは一部門としての活動を超えた、会社全体の必死さが伝わってきます。

 さらに印象的だったのは8月12日の投稿です。ご記憶の方もいらっしゃると思いますが、1985年8月12日は御巣鷹山の事故があった日です。この日、JALのFacebookページには安全の総責任者と整備士の方々の写真が投稿されました。彼らは「JALは決してこの日を忘れない。二度と事故は起こさない」という安全に対する思いを自らの言葉で語っていました。こうした事故について自発的にメッセージは発することは相当の覚悟が必要だったと思います。それでも事故にしっかりと向き合おうとする彼らの姿勢に私は深く感動しました。

 こうしたソーシャルメディアでの取り組みは社内にも変化を生み始めているようです。今JALでは多くの社員がFacebookに登場し、顧客と直接対話することで新しい意識が共有されています。社員数約3万人の大きな企業の中で、主要メンバーわずか3~4名というFacebookチームですが、そこでの顧客との対話から生まれた影響は組織全体へと広がり、JALの変革を加速させるエンジンになる可能性を秘めているようです。

 JALはこれから再建時のひたむきなコミュニケーションから、次のステージに進むことになるでしょう。これからは、企業ブランドという付加価値が社会や消費者にとって有益であることを見る人にわかりやすく伝え、コミュニケーションしていく必要があります。これは今、多くのブランドが抱える課題ですが、その解決に「ブランドの姿勢(スタンス)」を強く示すことがいかに重要かをJALの事例は教えてくれました。

何が違う? 購買プロセスから
考えるCRMとソーシャルメディア

 ソーシャルメディア上での顧客との対話は、企業活動に共感してもらいファンになってもらうほかにも、CRM(Customer Relationship Management)の観点からも今後重要になってくるでしょう。最近では「ソーシャルCRM」や「ソーシャルコマース」といった言葉を耳にする機会も増えてきました。

 第2回でお話したとおり、CRMが注目されるようになったのはコールセンターのIT化が急速に進んだ1995年以降です。バブル経済崩壊後、いわゆる「失われた20年」の初めの頃、当時の世相同様マーケティングも大きな転換期を迎えていました。市場シェアから顧客シェアへとパラダイムシフトが起こりはじめ、「One to Oneマーケティング」と呼ばれる概念が登場しました。

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コールセンター×ソーシャルメディア

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