競合他社が手をつないだらどんな効果が生まれるだろうか。国内自動車メーカー8社が共同で消費者に「クルマのある生活の新しい価値」を訴えた「Drive Heart」プロジェクトの仕掛け人が、共感を得て潜在顧客をつかむマーケティング手法の最新事例をスライドで解説する。
若者のクルマ離れを食い止める
競合8社の共同戦略
昨年12月に実施された国内自動車メーカー8社による合同企画「Drive Heart」をご存知でしょうか?
ご存知ない方も多いと思います。なにせこの企画、一切マス・マーケティングをしていません。しかし、結果としては多くの生活者から共感を得ることができました。
何に共感を得たかと言えば、「自動車そのもの」というより「クルマを所有することによって生まれる付加価値」です。さらに言えば、ここでの付加価値とは従来マス・マーケティングによってブランディングが図られた「所有すること自体の価値」ではなく、ネット時代・ソーシャルメディア時代だからこそ注目される「所有することによって生まれる新たなライフスタイルや体験、感動といった価値」を指します。
この価値には従来からのクルマ好きだけでなく、クルマにあまり興味のない若者世代も共感してアクションを起こしました。みなさんの周りの若者世代のクルマ観も、今や「ステータス」ではなく移動の「道具」だったり、さらには「クルマを持つ気がない」という人も多いのではないでしょうか?
自動車メーカーが共通して抱える問題はこうした「若者のクルマ離れ」です。しかしこの問題は、自動車業界に限らず、人口減とそれに付随する購買パワーの減少にあえぐ日本経済においてさまざまな業界に共通するものといえるでしょう。
「Drive Heart」は、日頃は熾烈な競争をしている国内自動車メーカー8社が手を取り合って「業界共通の問題」に立ち向かった試みなのです。この企画を実施するにあたり、「自動車メーカーの合同体」である「Drive Japan」という活動体が立ち上がりました。
これは、各メーカーのウェブ担当者たちが中心となり、「8社合同を実現させる」ことを目指して限られたリソースのなかでようやく実現したものです。
そして、この「Drive Japan」で実施したのが、“クルマの本質的価値を生活者が語り、これをクルマに関心のない若者と共有する”「Drive Heart」という企画です。