パジェロ、ランエボ、
そしてi-MiEVのDNA

竹内 欧州の自動車メーカーもプラグインハイブリッドを投入し、競争は激しくなっていると思います。そんな中で三菱自動車ブランドのイメージ、特にWRC(世界ラリー選手権)のランサーエボリューション、パリ・ダカールラリーのパジェロなど、4WDとモータースポーツでの活躍が強く印象に残っているはずです。

大谷 三菱は1917年に日本で初めての量産乗用車「三菱A型」から数え、昨年、クルマづくり100周年となりました。今ではSUVはどのメーカーでもラインアップしており、どこでも見かけるメジャーな存在となりましたが、まだ用途が限定され特異な存在であった頃から、長年にわたってSUVを提供し続けてきました。そのSUVにおいて欠かせないのが、4WDによる高い走行性能です。三菱自動車の4WD技術は長い歴史の中で、モータースポーツ参戦などを経て、常に進化し続けてきました。パジェロの使い勝手の良さと、オンロード、オフロードを問わないランサーエボリューションの高い走行性能。そこにEVの技術とアイデアを組み合わせることで、唯一無二の存在にしたかった。生活圏は電気のみで走行でき、週末や長期のバカンスではエンジンによる長距離移動もこなし、どんな道路状況でも安心して走れる。「行動範囲を広げたい、さまざまなことに挑戦したい」、そのような志をもったお客様の期待に応えることにこそ、三菱自動車がプラグインハイブリッドをつくる意味があります。

竹内 そのEV技術ですが、三菱自動車は2009年には世界初の量産EV「i-MiEV」を発売するなど、電動化のフロントランナーでもありました。こうした経験、技術の蓄積は、どんな形でアウトランダーPHEVに反映されているのでしょうか。

大谷 先ほど、EVに匹敵するバッテリーを搭載しているとお話ししましたが、強調したいのは、アウトランダーPHEVは「EVがベース」であることです。車名を「PHV」ではなく「PHEV」とした理由もそこにあります。欧州で販売されている他メーカーのプラグインハイブリッドは、多くがハイブリッド車がベースですが、アウトランダーPHEVはEVから発想している。これが大きな違いです。

竹内 ハイブリッドは、エンジンをベースにモーターがアシストするというイメージですが、どう違うのでしょう。

三菱自動車プロジェクトマネージメント本部プロジェクト推進部主任・上平真氏

プロジェクトマネージメント本部プロジェクト推進部主任・上平真氏(以下、上平) 大きな特徴は、トランスミッションやプロペラシャフトがないことです。少し専門的な話になりますが、フロントには駆動用のモーターがあり、前輪の駆動は基本的にこのモーターで行います。そのほか前輪側にエンジンとジェネレーター(発電用のモーター)があり、バッテリーが少なくなったときには発電を行い、電力を供給します。急加速や高速走行時はクラッチをつないでエンジンが前輪の駆動を主導しますが、トランミッションはありません。

竹内 試乗した際、クラッチをつなぐショックをまったく感じませんでした。回転しているモーターに、エンジンの回転数を合わせ、クラッチをミートするのに振動がほとんど発生しないのは驚きでした。

上平 そこが苦労したところであり、EVで培ってきたモーター制御のノウハウがあるからこそ実現した部分でもあります。また、試乗の際にEVがベースであることを、最もよく体感していただけると思います。