建築家に依頼して家を建てるのは、「限られた裕福な人のみ」と考えがちだが、今後はごくふつうの住宅取得に、さまざまな形で建築家を活用できる―そんな思いからマッチングサイト「建築家オウチーノ」を主宰しているのが、ホームアドバイザーの井端純一氏だ。これからの「建築家との家づくり」とは、どんなものになるのだろうか。
建築家は芸術家であり
エンジニアでもある
―― 現在、建築家(一級建築士)は日本に34万人いる。そのすべてに潤沢に仕事が回っていないという、厳しい現実がある。
建築ミニバブルといわれた2003年から07年でも、後半の2年は全国的に住宅の建設が低調だった。それがリーマンショック以降大幅に落ち込み、さらに仕事が減った。経験豊富な実力ある建築家も、才能豊かな若手建築家も、力量を発揮できなければ埋もれていく。これは非常にもったいないことだ。
中世の建築技術者は、一般に職人とみなされていた。建築家としての職能、地位を確立したのは15世紀イタリアのブルネレスキといわれる。中世の職人にはない高い教養と最新の科学知識を建築に生かしたからだ。
現在の建築家は、その系譜をひいている。芸術家であると同時に、優れたエンジニアであることが特徴だ。
その才能は、現在のように「地震対策」や「環境対応」が住宅の課題となっている時代において、じつに貴重なものとなる。
―― 具体的には、どのように建築家と「地震」「環境」を結びつけるのか。
例えば既存物件の耐震診断をする、あるいは新築の建て売りの住宅診断をして欠陥住宅を見抜くなど、構造に精通した専門家として、購入者の側に立った公正なチェックができる。また、新築はもちろん、リフォームでも、「地震」と「環境」を十分配慮した住宅を、予算の範囲内、希望に沿った形で造りあげる。住宅性能を高めつつ、個性を持たせ、長く住み続けたくなる、愛着の湧く家に仕上げる。これは、芸術家兼エンジニアでないと、できない仕事だ。
ローコスト狭小住宅への
建築家起用が増えた
―― しかし、多くの人は建築家に依頼する家づくりを想定してこなかった。また、設計料などコスト増も懸念材料となる。
現在、増えているのは狭小地や変型敷地に建てるローコスト住宅と、1000万~1500万円程度のフルリフォーム。案件にもよるが、設計料10%以下で請け負う人も多い。コスト管理を徹底するので、「建築家を入れたらコストが跳ね上がる」というのはすでに古い常識だ。
むしろ制約がある条件下でこそ、建築家の腕が際立つわけで、建築家もまた、難易度の高い案件を「腕の見せどころ」として積極的に取り組む傾向がある。
狭小地というと、今では15坪あれば贅沢なくらいで、10坪程度の案件も多い。そこにどう、思いを込めて造りあげるか。たんに建物を造るのでなく、生涯に一度あるかないかの住宅建築に「感動」をもたらす。私はそこが、建築家起用の最大の効用だと考えている。
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