税務部門が取り組むべき課題を10項目に集約

グローバル・タックスマネジメントで真のROE経営の実現へKPMG税理士法人
国際事業アドバイザリー
移転価格グループ
角田伸広
パートナー/税理士

「税務戦略は事業の一部であるという認識を持つべきです」と駒木根氏は強調する。例えば、海外に子会社を設立する場合、資本金の設定や商流のつくり方、会社の形態などによって、現地での課税額は大きく変わる。課税額が増えれば増えるほど、税引後の利益は圧縮されてしまうため、本来、税務を事業と切り離して考えることはできないはずなのだ。

「グローバル・サプライチェーンを構築する際、欧米企業の場合は、税務部門の担当者が関与し、税務の観点からグローバル最適化を図ろうとします。企業買収や事業再編などに当たっても、意思決定時においてCTO(チーフ・タックス・オフィサー)やタックス・ダイレクターといった税務担当責任者のサインがなければ、物事が進まないことも多く見られます」(駒木根氏)。

 日本企業の特徴である事業部制の強さも、時には税務戦略に取り組む際の大きな障壁になる場合がある。日本企業の場合、各事業部が主導する形で海外ビジネスが進められることも多い。営業利益をKPI(重要業績評価指標)とする事業部と税引後利益を重視する税務部門とでは認識が一致せず、税務のグローバル最適化を図ろうとすると、事業部が抵抗勢力になることもあるという。

グローバル・タックスマネジメントで真のROE経営の実現へ「10 Things To Do」の詳しい内容は下記のサイトをご覧ください http://www.kpmg.com/jp/globaltax
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 KPMG税理士法人では、こうした「組織風土・意識改革」を含め、「組織整備」「インフラ整備」「業務・プロセス改革」といった観点から、グローバル・タックスマネジメントを実現するために、日本企業の税務部門が取り組むべき課題を整理し、「10 Things To Do」として、10項目にまとめている(図表参照)。

「これらの10項目は、実際にわれわれがクライアント企業の中に入って、グローバル・タックスマネジメントの実現には何が重要なのかを積み上げてきた結果、集約したものです。決して理念的、概念的なものではなく、実践的内容になっているのが大きな特徴です」(角田氏)