途上国の研修生を海外展開の担い手に
一方、途上国からの研修生を足掛かりに海外進出を図る中小企業も出始めているという。
「電気部品メーカーのA社はベトナム進出を考えていましたが、英語を話せる人材も海外との取引経験もありませんでした。そこで社長は、ベトナムから研修生を受け入れ、5年後に必ずベトナムに工場を造るから、君たちがリーダーになってほしいと伝えました。彼らにしても5年後に帰国し、日本企業の工場長やチームリーダーになれるとなれば、やる気も出るし、一生懸命勉強します」
実際、同社は5年後にベトナムに進出し、研修生はリーダーとして活躍している。このように研修生を海外展開の担い手に抜てきするケースも増えているようだ。
海外進出は人材獲得にも有効
「海外進出というと、産業の空洞化や技術の流出を招くというマイナスイメージがありますが、それは誤解。実際には、積極的に海外事業に取り組んでいる中小企業ほど生産性は高い傾向があり(下図参照)、国内の雇用も増やしています。
海外進出する中小企業は生産性が高い

ですから、途上国の社会課題解決や国民のニーズに、日本企業が培ってきた技術やサービスで積極的に応えていくべきです。中小企業の途上国進出は本来、日本の成長戦略の柱にしなくてはいけないのです」
まずは、目先の利益を追い掛けるよりも、途上国の社会・経済状況や環境、文化などをよく分析し、発展に貢献していくというスタンスが大事だという。経済発展とともに確実に市場は拡大していくわけだから、現地に企業名や製品が浸透していけば、いずれ大きな利益をもたらしてくれるはずだ。
「海外進出した中小企業にどんなメリットがあったかを聞くと、『入社希望者が増えて人材が集まるようになった。その効果が一番大きい』という答えが多くの企業から返ってきました。今の若い人たちは国際社会貢献をとても重要視しています。ですから、途上国で活動している企業に関心が集まります」
途上国ビジネスで培ったノウハウもそれを見て集まってきた人材も、中小企業の大切な財産になることは間違いない。いずれにしても、資金も人手も限られている中小企業だからこそ、途上国ビジネスのパートナー選びが非常に重要になる。現地の事情に精通し、幅広い人脈やコーディネート力などを持つ専門家を参謀に持ちたいものだ。