日本発のリサイクル技術で
海外進出の可能性も

「前社長の小六信和は1992年に創業者から経営を受け継いだ2代目で、事業のかたわら、岡山県内のみならず、全国各地の小学校や団体を訪ねて『紙はゴミじゃない』をキャッチフレーズに古紙リサイクルの大切さを長年にわたって訴えてきました。次代を担う私の役割は、この理念に現実的な道筋を作ること。つまり、いつでもだれでも古紙のリサイクルに参画できるスマートな仕組みをつくることだと思っています」

 ただし、再生紙原料としての古紙の需要は減っているのが現実だ。

古紙の回収率と利用率

 そこで同社では、回収量を増やすだけではなく、新たな活用の可能性も模索している。2016年から琉球大学工学部とともに取り組んでいる産学連携プロジェクト「アイランド構想」がそれだ。

「もはや資源を再利用する『リサイクル』は当たり前です。これからは、資源を有効活用することで環境を修復する『レメディエーション』の発想が必要だと私は考えています。そんな観点から注目しているのが『島』なんです。資源や物流ルートが限られた島では、他のエリアよりも資源を循環させることに意義がある。私たちは沖縄でも『えこすぽっと』事業を展開していますが、沖縄には製紙会社がないので、集めた古紙を持ち込む先がありません。それなら、沖縄島内で有効活用する道を自分たちで開発しようと考えたのです。古紙は天然素材生まれで自然に還りますし、繊維という特性を生かせばさまざまなものに混ぜることができる。再生紙の材料としてはもちろん、飼料や燃料などさまざまな可能性があります」

 現在、生活を守るための地盤改良材や高品質な農産物を育成するための被覆材など、「紙を紙に戻す」以外の研究が進められているという。

「地域で生産されたものを地域で消費することを〝地産地消〟といいますが、この取り組みはその逆です。地域で消費されたものを再び地域で生かす〝地消地産〟なのです」 

 社会から出た不要物を使って環境を修復する──。こうした技術を確立すれば、台湾やシンガポールなど、海外の「アイランド」へも日本発の環境技術として輸出できる可能性が広がる。

「古紙って、一度は社会で役立ち、不要物となったものですよね。私はその点にこそ大きな魅力を感じるのです。資源として再利用すればするほど価値が増えていくわけですから。環境保全やリサイクルというと、電気や水道の使用を「減らす」ことや、資源の無駄遣いを「なくす」ことが連想されがちですが、私はそうではないと思っています。私たちの事業の根幹である『バリュードウェイストペーパー(価値ある古紙)』をもっと活用し、もっと社会を豊かにする企業活動にこれからも取り組んでいきます」