ビジネスのペーパーレス化の中でも遅れていた、行政手続き、契約、請求など、紙の書類が当たり前だった分野についても、クラウドソリューションの活用が本格化しつつある。背景には、行政手続きも含めて電子化を進めていこうとする世界的な流れがある。
行政手続き、契約、請求――、紙の書類で業務を進めることが当たり前だった分野にも、クラウドの波が押し寄せている。
ITの普及で、ビジネスの現場ではパソコンなどの利用が一般的となった。しかし、組織の境界にまたがる領域――企業と企業、企業と個人、企業と行政の間では、紙の書類がまだまだ残っているのが実情だ。そのため、この領域を電子化する取り組みが本格化している(下図)。
紙の書類を追放してデジタル化を推進するための取り組みは、過去十数年の時間をかけて進められている。日本では、電子署名などの技術を活用するための法規の整備がすでに済んでいる。さらに、ここ数年で契約書類の電子化に活用できるクラウドサービスなども登場してきた。行政手続きの電子化を推進する「デジタルファースト法案」の成立へ向けた動きも進行中だ。文書の電子化は、もはや止められない流れとなりつつある。
デジタル化で
業務スピードを上げる
紙の書類がいかに非効率であるかを、契約書の作成業務を例に見てみよう。企業間で契約を締結する際、契約書の作成や修正まではワード文書で電子的に行われている。だが、その先は完全にアナログだ。書類を印刷し、複数ページにまたがる書類の場合には製本し、印紙税を支払った証票である収入印紙を貼る。そして、代表者印を押印、製本部分や印紙にもきちんと割り印を押す。その上で1部を相手企業に送付し、1部を自社で保管する。このような手続きを当たり前のものとして受け入れている人は多いだろう。
しかし、このような紙の書類を扱う業務は、いまやデジタル化の大きな阻害要因だ。デジタル化で業務のスピードを上げても、紙の書類が間に入ることでスピードが失われてしまう。しかも、重要書類の承認や決裁に関わる業務に従事するのは、幹部や専門知識を持つ社員だ。彼らの貴重な時間が、紙の書類に費やされている。
文書電子化の動きは行政も推進しており、もはや止まらない。残るハードルは、多くの実務者が今も抱いている「紙の処理が当たり前」という常識だ。紙の文書をクラウドソリューション上の業務に置き換え、専門家がより自由な働き方でより生産的な仕事をすることが、これからの企業の競争力の確保のために重要となるだろう。
(本コンテンツは「週刊ダイヤモンド」2018年9月29日号[9月25日発売]に掲載した記事の転載です。)