安全運転にもつながる
エコドライブ
ドライバーが気づきを得る方法として効果的なのが、自動車メーカーや教習所などが実施している安全運転プログラムを受講することだ。ドライバー個々の心理や性格、運転行動の特性などをテストや実際の運転で診断し、その結果に沿って専門の講師がカウンセリングをするというもので、自分自身では気づくことのできない運転の癖や特性を指摘してもらえる。
近くにそのような設備がない、あるいはコストがかけられないという企業も多いだろう。そこで春日教授が推奨しているのが、エコドライブ普及連絡会が制定した「エコドライブ10のすすめ」に取り組むことだ。「やさしい発進」など10項目のコツを実践することは、燃費改善になるだけでなく、そのまま安全運転にもつながるからだ。
企業でエコドライブを実践する場合、日々の運転結果を記録することが基本だ。記録する際、ドライバーは「今日はあまり燃費が節約できなかった。明日はゆっくりスタートを心がけよう」と気づきが得られる。気づきと修正を繰り返し、実際に燃費が改善することで、エコドライブが身に付き、最終的には自分の思い通りの燃費で運転できるほど技術が上達するという。
またエコドライブは心理的報酬が得られる点でも効果がある。
「人は、形のないものを報酬として感じにくいため、安全を心理的な報酬として捉えることができません。しかしエコドライブを実践し、燃費の改善という目に見える形になることで、心理的報酬を得ることができます。社内表彰などの制度があれば、さらにプライドも獲得でき、それを保つためにもドライバーは安全運転を続けるのです」
運転を支援するツールの導入や、社内の安全運転教育について力を入れている企業は多い。それらは大切なことだが、もし危険運転を指摘して厳しく指導するだけのやり方をしているならば効果には限界がある。
「最近頻発している悲惨な交通事故も、気づきの欠落が誘因になっていると考えられる」と、春日教授は指摘する。
ドライバーの自己改革を促し、継続的な安全運転を実現するには、いかにしてドライバーに気づきや心理的報酬を与えるかという視点が重要だ。