• 臨床試験を巡る批判

 ミリアドは売上高の65%を占めるがんの遺伝子検査における基盤を固めているが、2018年度の売上高は7億7300万ドルと前年度から横ばいであり、1株当たり利益(EPS)の1.20ドルは以前のピークを大幅に下回っている。同社は事業の多角化を目指して、ジーンサイト検査を開発していたアシュレックス・ヘルスを2016年に買収し、薬剤の安全性や有効性に関連する遺伝子の検査を行う薬理ゲノミクスの分野に参入した。

 ジーンサイトでは抗うつ剤の活動や代謝と関連する8つの遺伝子の差異を分析し、一般的に使用されている38種類の向精神薬を、患者の遺伝子に適合する薬剤、遺伝子とある程度の相互作用がある薬剤、あるいは相互作用のために適合しない薬剤に分類する。ジーンサイトなどの臨床検査は患者の体内に何かを入れるわけではないため、米食品医薬品局(FDA)の販売承認は不要である。ミリアドは数回の小規模な臨床試験を経て同検査の販売を開始し、同検査はメディケア(高齢者向け医療保険制度)の限定的な対象となった。同検査の2017年6月終了年度の売り上げは7800万ドル、2018年6月終了年度は1億2500万ドルであった。同社は精神科医による利用の拡大と、検査1回当たり2500ドルの費用の保険会社によるカバーを目指して二つの大規模な臨床試験を行った。

 1回目はインパクト試験で、2018年7月に精神医学系専門誌「Journal of Psychiatric Research」に掲載された報告では、約1900人の患者についてジーンサイトの使用が患者の報告する抑うつ症状の大幅な改善に関連しており、寛解に至ったと言えるほどに症状が改善した患者の比率が増加したとされた。しかし、その3カ月後にトロント大学のロジャー・マッキンタイヤ精神医学教授からの臨床試験に対する厳しい批判のレターが掲載され、また複数の研究者が臨床試験の一連の不備を指摘した。例えば、同試験ではどの患者も比較対象となる他の治療を受けておらず、また患者が試験を受けていることを認識していたため結果にはバイアスがかかっている可能性があった。複数の医学誌には薬理ゲノミクス検査の広範な使用への懸念を表明する論説記事が掲載され、アメリカ精神医学会は「現在の技術水準では、日常的な臨床業務への薬理ゲノミクスの応用は支持されない」という意見書を公表した。

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微妙な結果のガイデッド試験

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