日本は、2020年に中古住宅流通・リフォームの市場規模を倍増させることを目指している。30~40代を中心に、中古住宅人気も上昇中。この勢いを加速させるには、流通改革と更なる優遇税制が必要だと提唱するのは、不動産情報サイト「オウチーノ」を主宰するホームアドバイザーの井端純一氏だ。
ユーザーマインドに
変化の兆し
――中古住宅市場における大きな変化として、築年数の古い物件の取引が増えたことがある。
昨年度の首都圏の中古住宅市場を概括すると、成約件数は前年並みだが、築30年超の中古マンションの成約が対前年比12.5%増と大幅に増えている。山手線の内側など非常にいい場所であれば、築年数は問わないという人が動いているようだ。全体に30代~40代前半の一次取得層の動きが活発で、従来の住宅取得の概念にとらわれない、面白い動きも出ている。
――面白い、というと。
従来であれば、明らかに高額の新築物件を買ったと思われる人々が、築古の中古物件購入に回っている。また、京都や奈良の町屋、東京下町の長屋を改修して賃貸にしたり、シェアハウスにすると、あっという間に埋まる。古い物件の改修に、洗練された美意識を見出しているようだ。中古住宅を購入すること自体が循環型の経済社会における合理的な選択だという、肯定的な評価も増えてきている。
米国並みの
大胆な市場改革を求める
――住宅を循環させるという意味では、中古流通が不動産市場の主役となっている欧米の取り組みが注目される。
例えば米国は70年代まで、現在の日本と同様、中古流通途上国だったが、大胆な流通改革、税制改革を行った結果、中古流通が不動産市場の8割以上を占め、重要な経済エンジンとなっている。米国で不動産情報1件に対し画像が50~100点も出てくる。圧倒的に情報量が違う。また購入価格はいくらだったか、その後何回改修したかなど、履歴もすぐわかる。資産価値を、データでチェックできるのだ。
――日本では購入価格までオープンにする慣習はない。
確かにそうだが、中古住宅の売買で儲けを出すことを是としていることに注目してほしい。米国では、不動産売買によるキャピタルゲインには、上限を設け課税されない。住宅ローンに対する税も恒久的に免除されている。いい物件を選んで投資し、積極的に資産形成していくことを、税制で後押ししている形だ。
――流通システムはどうか。
日本で今後求められるのは、中古一戸建てが築20年超で建物価値がゼロになる実状を改めること。金融機関の査定に柔軟性を持たせ、土地と建物を一体化させ評価する仕組みと、査定の専門家を育てる必要がある。一例に過ぎないが、そうした税制と金融の改革が進めば、中古市場は大きく拡大し、住宅の循環が加速するのではないだろうか。
■マンション、戸建ての「最新」新築物件情報を、売主のメッセージと一緒にお届けしている特設サイト『マンション・戸建て極上「中古」を探せ!2012年版 online』もあわせてご覧ください。
[制作/ダイヤモンド社 クロスメディア事業局]