近年竣工のオフィスビルは、さまざま機能を高水準で備え、高機能化している。しかもそれは単なるインフラストラクチャーだけではなく、“快適に働ける環境”というソフト面も充実したものである。
昨年から大規模オフィス供給量が増えている(棒グラフ参照)。リーマンショック以前の不動産市場活況期から始まる開発計画が完成したことによるものだ。今年も東京・大手町や丸の内地区などでの竣工が相次ぐ。これら新築の大規模オフィスビルは、強固なセキュリティシステムや環境に配慮した高効率の照明・空調システムを備え、耐震性にも優れた、いわゆる高機能ビルである。
防災機能と知的生産性の向上
東日本大震災以降は、耐震性に加え、災害時でも電力供給に不安のないよう自家発電装置の設置の有無にも注目が集まり、実際に、東日本大震災前後では、ビル選定基準が大きく変化してきた(円グラフ参照)。
震災前のオフィス移転といえば、コスト削減などを目的としたオフィスの集約・統合によるものが多かったが、震災後は企業の事業継続計画(BCP)意識の高まりとともに、多少コスト高になっても耐震・防災機能の高いビルを選択する傾向が高まっているようである。
また、こうした高機能オフィスビルには照明や空調の分散制御システムが導入され、オフィス環境の快適性・利便性への配慮もなされている。「知的生産性の向上」ということがいわれるようになって久しいが、オフィスを知的生産拠点と捉えた環境整備において、省エネルギー化と快適性の維持・管理を両立できる最新の照明や空調システムの導入は、当たり前のことになってきている。
こうしたオフィスビルの高機能化は、中規模オフィスビルにも及んでいる。最近の築浅・新築の中規模オフィスビルの中には、大規模オフィスビルと比べても遜色のない機能性を備えたオフィスビルも登場し、話題となっている。中規模オフィスビルに入居する企業にとって、オフィスの選択は大きな意味を持つ。知的生産性はもとより、社員のモチベーション向上や人材流出を防ぎ、業績アップにつながるオフィスを求めているからだ。中規模オフィスビルにこそ、高機能化が求められているのである。