来年度の創立80周年に向けて、今、大きな学校改革が進展している北鎌倉女子学園中学校高等学校。 新しい教育目標は“のびやかな自立した女性を育てる”こと。トップ外交官であった藤崎一郎理事長が 「ジエシカ」と呼ぶ四つの改革を推進。制服も変わり、新たな学園に生まれ変わりつつある。
藤崎一郎理事長
北鎌倉の駅から徒歩7分、北鎌倉女子の校舎は古都鎌倉の高台、小鳥がさえずる明るい緑の中にある。創立は1940年。神奈川県内の私立校では唯一、普通科に加えて専門教育を行う音楽コース(中学校)と音楽科(高等学校)を持つ学校だ。
伝統的に、“しつけが厳しく家庭的だがおとなしい”校風だったが、2020年の創立80周年を見据え、「のびやかな自立した女性の育成」という新たな教育目標を設定。これまでにない、大掛かりな学校改革に取り組んでいる。その改革を率先するのは、元駐米特命全権大使で、現在も日米協会会長を務める藤崎一郎理事長だ。
「本校は、創立者である額田豊博士がドイツに留学し、科学的な教育を受けて自立するドイツ人女性の姿に感銘を受けたところからスタートしています。戦後、良妻賢母の育成に舵(かじ)を切りましたが、現在は女性が自立して活躍する時代になっています。そこで、これまで本校で育まれてきた、温かい人間関係や、緑豊かな環境を生かしながら、“ジエシカ”と呼ぶ四つの改革を推進しているのです」
受験に強い授業と英語教育の抜本的強化
“ジエシカ”の「ジ」は、自主性の尊重と受験に強い授業、という意味だ。多彩な大学入試に対応するため、過去の指導データを生かした進路指導を展開するほか、非認知能力を高めるアクティブラーニングを導入。また、全館Wi-Fiを完備して全生徒にiPadを貸与、教師は全員がApple Teacher資格を取得し、インタラクティブな学習を進めている。
「エ」は、英語教育の抜本的強化だ。日本人教員とネイティブ教員によるTeam Teachingや少人数授業で英語4技能※を強化するほか、英検やTEAP(ティープ)などの英語資格のトレーニングも受けられたり、遊びながら英会話を学ぶEnglish Roomを開設。外国人観光客の多い鎌倉の寺社を英語で案内するボランティアなど英語を使う環境を整え、“英語のキタカマ”を目指す。
「シ」は、施設・設備の一新だ。音楽校舎の大幅なリニューアル(音楽室2・レッスン室9・練習室12)に加えて、教室や職員室・食堂も改装。従来の図書館や自習室に加えて、グループ学習や教え合いができる“話ができる自習室”も新設した。
そして「カ」は、鎌倉に密着した体験学習。鎌倉にある学校という立地を生かして、円覚寺管長や鶴岡八幡宮宮司の説話を聞いたり、地元商店街とコラボして“つるし飾り(折り紙や布などで作った細工物をつるした伝統的な飾り物)”やガイドブックの作成を行い地域貢献を果たしながら、コミュニケーション力や人間力を高めていく。
人から求められることで社会とつながれる
コシノジュンコ氏
北鎌倉女子学園の新たな制服は、歴史の一歩を踏み出します。女性らしい凛(りん)と
した装いで、新しい学園生
活を送ってください。
「長い外国生活を通して、これからの日本人には、自主的に判断する力・英語力・専門性の三つが必要だと痛感しています。このうち前者の二つを、中高時代に少しでも身に付けてもらいたい。そして将来、専門性を身に付け、自分を強くして、人から求められる人間になってほしい。求められることで初めて、社会につながることができ、真の“のびやかな自立した女性”になれる。その土台をつくるのが、学校の責務だと思っています」(藤崎理事長)
目指すのは、自分の未来を自分で開くことのできる女性だ。藤崎理事長は、全校生徒向けに時折行っているアンケートを熟読するという。そして、「できるものから実現している」(藤崎理事長)。
19年度入学生から、制服も一新された。デザインしたのはコシノジュンコ氏。在学生と共に“新制服プロジェクト”を始動、ここでも生徒の自主性が尊重された。
文化祭はTシャツでも参加可となり、部活は週3回までになり、自習を含めて多様な活動ができるようになった。修学旅行は、今年度は台湾、来年度はマレーシア・シンガポールを予定。校風ものびやかになり、“キタカマ”は急速に変わりつつある。
新しい“キタカマ”に向けて、新理事からのメッセージ
オペラ歌手・森 麻季理事
公開レッスンに2回ほどうかがいましたが、生徒の皆さんは真摯に、一生懸命演奏してくれました。私自身も熱くなって一緒に歌い、とても充実した時間でした。本校は少人数なので、手厚く熱心に指導してくれる先生方に囲まれ、設備にも恵まれています。音楽をはじめ、さまざまな分野で国際的に活躍できる卒業生が増えることを確信しています。
宇宙飛行士・山崎直子理事
昨年6月、"宇宙、人、夢をつなぐ"と題して教養講座の講演を行いました。目の前のことを大切にすること、新しい世界に挑戦する大切さなど、中高時代に感じたことも交えて話をしました。生徒たちから、多くの感性あふれる質問があったことが印象に残っています。今後も生徒の成長を応援し、その挑戦を後押ししたいと思っています。
https://www.kitakama.ac.jp/