グローバルクラスやPBL(※)型授業の浸透で、
積極的な機運を生み出す伝統校

120年を超える歴史を持つ和洋九段。「和やかにして洋(ひろ)らけき」の教育理念の下、常に時代を切り開く人材を輩出してきた。2017年から新たなコース制による学校改革がスタート。グローバルクラスやPBL型授業の本格導入で、活気のある学校へと進化している。

グローバルクラスやPBL(※)型授業の浸透で、積極的な機運を生み出す伝統校和洋九段女子中学校 高等学校
中込 真校長

グローバルクラスが設置されて3年目、校内では英語に対するハードルが低くなり、間違いを恐れずに学習する環境が整っている。同クラスは、海外帰国生が英語で授業を受けられるアドバンストと、これから英語を学ぶ生徒のためのインターメディエイトに分かれ、レベル別授業を実施。後者は、段階を踏んでオールイングリッシュの授業に移行する。

「グローバルクラスはオープンマインドの生徒が多く、何にでも積極的に行動します。その雰囲気は本科クラスにも影響を与え、学校全体に英語を学ぶ意欲があふれています。中3の修学旅行はシンガポールに行きましたが、今年現地ではシンガポール国立大学や現地校の学生たちと交流、物おじせずにコミュニケーションを図ろうとする姿が目立ちました」

 そう語るのは、就任以来学校改革に積極的に取り組む中込真校長だ。今年度からは、UPAA(海外協定大学推薦制度)に加盟、マンチェスター大学をはじめとする欧米20の大学へ進学できる道を開いた。外国人枠で入学でき、日本国内の大学との併願も可能というメリットがあるため、海外大学への進学がより具体的になっている。

 さらに今年度から、大学での利用度が高い「読む・聞く」に特化したeラーニングシステム「College Pathway」を全クラスに導入して、自学自習で英語を学ぶ力を強化する予定だ。

※「PBL」……プロブレム・ベースド・ラーニング

農業体験でもPBL型
授業の成果を発揮

 和洋九段のもう一つの特徴は、自由な発想を育むPBL型授業だ。教師から投げ掛けられる“トリガークエスチョン”が知的好奇心を刺激し、生徒たちは対話型の授業を通して、疑問→仮説→検証→結論という論理的思考力を身に付けてゆく。

 PBL型授業は他者の意見を尊重し合うため、集団の中でお互いの考え方を深く知るようになる。時には論理的な正しさに加えて、「共感」によって賛同を得ることを学ぶなど、人間関係を育てることにも役立っている。

 和洋九段ではまた、自主活動という名の探究活動を行っている。その伝統を受け継ぎ、今年も高1で農家に民泊する“農業体験”を実施した。場所は長野県の飯綱町(いいづなまち)芋井地区。民泊の後は、成城大学経済学部の境新一教授を招いて、同地区を魅力ある地域にする「地域再生プロジェクト」について議論を展開。クラウドファンディングによる資金調達と事業案を提案するなど、生徒たちは日頃のPBLの成果を遺憾なく発揮した。

 来年度からは、理数探究のカリキュラムを充実させるため、高校にサイエンスコースを設置する予定。文系でも科学的思考力が求められる時代であり、理系進学にこだわらず視野の広い生徒を育てるのが狙いだ。「21世紀型教育は、生徒たちを外に出して学ばせるのが一番」と断言する中込校長。その積極性が、和洋九段の新たな伝統をつくってゆく。

グローバルクラスやPBL(※)型授業の浸透で、積極的な機運を生み出す伝統校普段の授業で培ってきた英語の力を発揮して、積極的にコミュニケーションを取る姿が見られたシンガポールへの修学旅行(中3)
和洋九段女子中学校高等学校
https://www.wayokudan.ed.jp/
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