トライアル&エラーを
100回以上重ねた
青色の純度と耐久性を向上させる手掛かりはあった。
フルカラーディスプレーに必要とされる光の三原色「赤、緑、青」のうち、赤と緑はすでに他社が実用化に成功していた。いずれもエネルギーを受け取るのに適した材料と、発光に適した材料を組み合わせることで色の純度と耐久性をクリアしていた。
舟橋はこれをヒントに仮説を立てて材料の構造式を考え、数カ月かけて材料を合成。さらに材料を組み合わせて評価にかける。代わり映えのしないスペクトルが出て、振り出しに戻る。トライアル・アンド・エラーを100回以上繰り返した。
2000年ごろ、ついに花は開いた。舟橋の目の前の画面に、仮説通りの美しいスペクトルが現れた。「これならいける」と確信した。
この流れで高効率で長寿命の純青色発光を実現する材料を開発し、02年に特許を取得。さらに改良を加え、05年には量産化のめどが立った。電機メーカーの担当者に開発した材料とその評価データを見せると好感触で、出光ブルーが実用化へ動きだした。
10年代の前半から有機ELテレビが登場し、米アップルは18年に発売したスマホ「iPhone X」に有機ELディスプレーを採用。有機ELの存在感はどんどん高まっている。
舟橋は今、後進の育成に取り組む。「有機ELディスプレーが採用されるようになり、有機EL材料は産業として成り立つようになった」と目を細めつつ、「その分、素材メーカーとの競争が激しくなった」と気を引き締める。より良い材料を求め、飽くなき研究は続く。(敬称略)
(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)
【開発メモ】有機EL材料
通称「出光ブルー」。フルカラーディスプレーを実現する高効率・長寿命の純青色発光を実現し、2002年に特許を取得。大型テレビやスマートフォンの有機ELディスプレーなどに発光材料として採用されている。韓国、中国、スイスにも製造拠点を設ける。発明協会主催の18年度全国発明表彰で最高位の「恩賜発明賞」を受賞。
写真提供:出光興産


