石油元売り第2位の出光興産が、岐路に立たされている。2006年の上場で経営危機から脱したが、昨年からの景気減退で、中核の石油、石油化学事業の需要が大きく減退。今後の需要見通しも期待できず、事業構造改革は待ったなしだ。期待をかける新規事業も景気後退のなかで失速し、難しい経営判断を迫られている。(取材・文/『週刊ダイヤモンド』編集部 野口達也)

 4月末の決算発表に合わせて、出光興産は第三次中期経営計画を発表した。出光興産を上場に導いた立役者である天坊昭彦社長が会長に退き、中野和久副社長が社長に昇格する人事を同時に発表しただけに、新体制の方向性を示すものとして注目されたが、多くのアナリストからは「期待はずれ」との酷評を与えられた。

 というのも中期計画であるのに実施期間が3~5年というあいまいな設定で、ROEなどの経営指標の目標数字はなし。投資金額は4000億~6000億円という幅を持った数字だったからだ。

 基本戦略には「『エネルギー・食料・環境』を切り口とした成長戦略への布石」としているものの、個別の目標数値がないだけに、期待はずれと言われるのも仕方ない。

 中期計画がこれだけ中途半端な発表に終わったのは、じつは石油元売り業界が「逆風の真っただ中」(三吉浩司執行役員)で、先行きもきわめて不透明であるためだ。

 足元を見ると、原油処理を行なう製油所の4~6月の減産幅は130万キロリットルと前年同期比17%も減少。世界的な景気減速のなかで石油製品の需要が落ち込んだのだ。石油化学の代表品種であるエチレンにしても5月以降、前年同月比で15~20%も減産している。

1969年レベルまで
需要が減退

 

 さらに中期計画の策定を困難にしたのが、将来の需要予測だ。上のグラフにもあるとおり、資源エネルギー庁が、3月末に発表した需要見通しは業界を震撼させた。

 2008年度の需要(実績見込み。燃料油)は前年度比7.9%減少と、過去2番目の下げ幅。また今後5年間で16.4%という大幅な減少を予想している。