自動運転車の基幹部品となる高感度カメラなどを製造しているのに、自動車産業の中で目立たぬ存在だった京セラ。同社初の“完成車”であるコンセプトカーの開発に成功し、シェア拡大ののろしを上げた。
鏡の代わりにカメラとディスプレーを使う電子ミラーや、よそ見運転を警告するドライバーモニタリングシステムなど13個の最先端機器を思う存分に搭載した。
従来、京セラの自動車関連事業は複数の部署にまたがり、開発から販売までバラバラに行っていた。
完成車メーカーにとってカメラとディスプレーは一対なのに、それぞれに売り込んでいてはプレゼンスが高まるはずもなかった。
コンセプトカーの開発チームには、こうしたたこつぼの弊害を打破し、関係部署が連携してスピーディーに自動車部品を開発する「モデルケースの確立」という裏のテーマも課されていた。
プロジェクトは研究開発本部が主導した。事業部門からは「本当にやれるのか?」「コストばかり掛かるのでは?」といった声も上がったという。
実際に、開発が始まると苦難の連続だった。「机上では想定できないトラブルが車に組み込むと起きた」(プロジェクトのテクニカルリーダー、新谷勇志)からだ。
機器を実際の使用環境で動作させるための作業をやってみて、完成車メーカーの苦労を嫌というほど味わうことになった。
最も悩まされたのが、コンセプトカーの目玉となる電子ミラーだった。カメラとディスプレーをつなげれば製品テスト通りに作動する。だが、狭い車内のスペースにそれらを詰め込むと、他の電子機器に反応することで、ディスプレーの画像が色あせたり、消えてしまったりした。