中古マンションと一口に言っても、立地も広さも築年数も実にさまざま。市場にはどのような物件が出回っていて、どのような物件が人気なのか。まずは中古不動産の現状を把握しよう。

駅近ほか立地条件に選択肢が多いのが魅力

中古マンションのメリットと価格・流通の現状を知る 藤木賀子(ふじき・よしこ)
「顧客に本当に良い家は顧客が良いと思う家」を信条に、建築会社勤務を経て2006年にスタイルオブ東京を設立。建築、ファイナンスを強みに不動産コンサルティング、売買仲介を行う。中古購入+リノベーションワンストップの先駆者として工務店支援や顧客の不動産仲介も。セミナー実績多数。

 中古マンションのメリットは、何といっても選択肢の多さにある。「この街に住みたい」「駅近がいい」と思っても、新築の場合はタイミングよく物件が出るとは限らない。しかし中古物件なら、幅広いエリアにさまざまなタイプの物件が存在しているので選びやすい。「リフォームやリノベーションで自分好みに変更できることが周知され、中古マンションに対するネガティブなイメージもなくなりました。『リビングだけはこうしたい!』といった一点豪華主義的なこだわりを持つ人は、思いを実現するために、むしろ中古物件を選ぶケースも増えています」(スタイルオブ東京・藤木賀子氏。以下同)

 さらに、中古マンションには実際の建物や住戸内を自分の目で見て確かめられるという安心感がある。「マンションは管理を買え」と言われる管理状態も確認できるし、気になる隣人やコミュニティの状況を売り主に尋ねることも可能だ。

 今年10月1日からの消費税増税が現実味を増した今、住宅購入への影響が気になるところだが、ほとんどが不動産(仲介)会社を通しての「個人間売買」である中古マンションには消費税がかからないのも魅力(買取再販物件など、事業者の販売物件は税込み価格)。仲介手数料やリノベ費用には消費税がかかるが、こちらは住宅ローン減税の延長(13年)など、増税後の負担軽減策で対応したい。

成約率トップは築5~10年 次いで築11~15年が高い

 ここで中古不動産の流通状況を見てみよう。東日本不動産流通機構(東日本レインズ)発表の「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2018年)」によると、市場に最も多く出回っていて(=レインズへの登録件数が多い)、かつ成約件数も多いのは、マンションも戸建ても「築31年以上」の物件となっている。

 住宅のストックが年々増えているのだから、築年数が上がっていくのも当然だが、「価格が安い上に、構造的には新耐震物件(1981年6月1日以降に建築確認を受けた建物)なら大丈夫という認識が広まり、おおむね築35年くらいまでなら安心と捉えられているようです」と、藤木氏は指摘する。

 一方、新規登録件数に対する成約件数の割合(対新規登録成約率)は、マンション、戸建てともに「築6~10年」が最も高く、次いで「築11~15年」となっている(図1参照)。まだ古い印象がない上に、分譲会社が10年間の瑕疵担保責任を負うことを定めた「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」の施行や、「住宅性能表示制度」の実施後に竣工していることから、安心感が高いこともうかがえる。

 中古不動産市場では、一般的に築年が古くなるほど価格は下がっていく。図2を見てほしい。マンションの成約価格は築6~10年で18%程度下がり、築16~20年で一段と下がって、築26年以上で横ばいとなっている。一方、戸建ての成約価格は築年数に応じてなだらかに下がり、築16~20年で一段と下がったまま下落していく。

 特徴的なのは、戸建ての新規登録物件と成約物件の平均価格に大きな開きがある点だ。中古物件の価格設定には売り主の希望が強く反映される。マンションの方が相場観を把握しやすく、売り主が相場に見合った価格で売り出していることが分かる。逆に考えれば、中古戸建てを狙う際には、交渉の余地が十分あるということだ。

好立地物件は値上がり傾向に 特に駅近が強い

 近年、「築年数に応じて価格が下がる」という中古住宅の方程式を打ち破る現象も起きている。

「最近は、『立地ありき』で住宅を選ぶ傾向が顕著になってきています。『この立地で、この予算でどんな物件があるか』が選択基準となるため、新築マンション、中古マンション、エリアによっては戸建て建売りまで並列で比較されています。特に都心の駅近物件の需要は高く、駅徒歩5分の築20年の物件と、同駅徒歩15分の新築物件の坪単価が変わらないといった現象も珍しくありません」

 都心部のマンションは値崩れしにくい上に、好立地に新築のマンション供給が少ないため、中古価格が相対的に上がっている。特に駅近物件の価格は高止まり状態にあるという。

 中古マンションの価格を決める要因はいくつかあるが(右コラム参照)、立地が占めるウエイトが大きくなっているのは間違いない。

「ただ、駅から多少離れても、周辺にお店や学校、大きな公園などの生活利便施設がそろっているとか、共用施設が充実していて楽しく子育てできる環境が整っている中古マンションは需要も高く人気です。要するに、立地や住環境など、『自分では変更できない要因』が重要で、これが中古マンションの価格を決めているということです。間取りなど、後でいくらでも変更できる要素は、もはや価格を左右する要因ではなくなってきています」

中古マンションのメリットと価格・流通の現状を知る

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