ANAも株数の約半分は個人投資家によって保有されているのだが、残念ながらPERは電鉄株やカゴメほどには高い水準にはない。
その理由としては、電鉄の場合はほぼ競争が存在しないこと(たとえば、京王沿線の住民は京王電鉄に乗るしかなく、小田急電鉄の住民も同様である)、カゴメはトマトカテゴリーにおいて圧倒的ナンバーワンの地位にある。ANAの場合はJALというライバルがおり、しかもドル箱路線の札幌線や福岡線ではAir Doやスカイマークも存在し、最近ではLCCの参入も見られる。
海外路線では外国のエアラインと競合をしている。したがって、競争環境は電鉄株やカゴメよりも厳しく、その分PERもそれらに比べると低くなる。したがって、ANAのほうが電鉄株やカゴメ株に比べると、より個人株主にコアなファンになってもらう必要があるし、個人株主以外の開拓も重要となる。
個人投資家の保有率は上昇するのか?
ここで一つANAにとって気がかりなのが、同社の個人株主の割合がこの数年間で上昇傾向にあることである。表は前回の増資の前の期から4年間の株主構成の変遷を見たものである。
個人株主の比率は年々高まり今年の3月末には54.15%に達した。これを見ると4年間に8%弱個人投資家の割合が上昇していることが見て取れる。特に直近1年間での上昇幅が大きい。外国人投資家が欧州不安などを理由に株式を売却し、その受け皿として個人投資家が買い増したことが背景にあると考えられる。
2009年の前回の公募増資の際にも多くの個人投資家に株式を割り当てたと想像されるが、ANAが開拓しうる個人投資家はこの4年間で開拓しつくしてしまっている可能性もある。
今回、インサイダー事件があったにもかかわらず主幹事は野村證券が引き受けている。これは、個人投資家への販売が重要なANAにとっては、野村を外すわけにはいかなかったという背景があるのだろう。
個人投資家の購入意欲をどの程度かき立てることができるか、これはインサイダー事件からの復活を果たそうとする野村證券にとっても、今年もっとも重要な案件となるはずだ。



