第5世代移動通信システム「5G」が2020年春から日本でも商用化される。高速大容量通信、超信頼・低遅延通信、多数同時接続といった特徴を持つ5Gをうまく活用できるかどうかで、ものづくり企業の競争力が左右されそうだ。

企業の内と外で
コネクテッド化への対応が求められる

5Gは「コネクテッド(接続)」に欠かせない技術だ。例えば、自動車業界に100年に1度の大変革をもたらすとされる「CASE(コネクテッド、自動運転、シェアードサービス、電動化)」への対応。カメラやレーダーなどで車外の状況を常に監視しながら安全に走行するのにも、自律走行する車の中で動画を見たり、テレビ会議に参加したりするのも、5G回線でつながっていることが前提となる。

 また、家電製品も今後はコネクテッド化が加速するだろう。家電同士が相互に通信しながら、協調してより便利で快適な生活を消費者にもたらしたり、インターネットを通じてソフトウエアを自動更新し、常に最新の機能を提供したりする世界が、もうそこまで来ている。

 5Gが製品のコネクテッド化を加速させる世界では、製造業自身も内なるコネクテッド化を迫られる。その理由の一つは、製品開発プロセスの複雑化・高度化だ。

 常に外部と情報をやりとりするコネクテッド製品を開発するには、日本のものづくり企業が得意とするハードウエア同士の擦り合わせばかりでなく、ハードとソフト、あるいはメカトロニクスなど、さまざまな領域の擦り合わせが必要になるからだ。

 また、コネクテッド製品は常にアップデートを繰り返し、最新の機能や顧客体験を提供する。このため、製品開発およびアップデートの高速化に対応しなくてはならない。従来のものづくりのバリューチェーンは、企画→設計→生産→マーケティング→販売といったように段階的に情報やモノが流れていくが、コネクテッド製品ではマーケットニーズを素早くバリューチェーン全体にフィードバックし、短期間で製品の開発とアップデートを行わなくてはならない。

 こうしたコネクテッド製品を前提としたものづくりの改革に、一部の欧米製造業はすでに取り組み始めている。例えば、高級家電メーカーのミーレ、清掃機器の世界的リーディングカンパニーであるケルヒャー、広範な車載システムを開発するボッシュ・カー・マルチメディアなどだ。

 これらの企業が、5G時代の到来に備えたものづくりプラットフォームをどのように構築し、そこからどういった成果を得ているのかをまとめた資料を用意した。デジタル革命の波を乗り越えるために、欧米先進企業にぜひ学んでほしい。