図2 クリエイティブ・オフィスの考え方 出典:「感性が育ち、創造が始まるクリエイティブ・オフィス」(クリエイティブ・オフィスづくり「見える化」委員会)

 オフィスのあり方を根本から見直すことで、コミュニケーションの活性化、モチベーションの向上、さらには意思決定の迅速化やプロジェクトのスピードアップを図り、それらを通して新たな知識を創造していこうというものだ(図2)。

 この取り組みでは、クリエイティブ・オフィスを「知識創造行動を誘発する空間、ICTツール、ワーカーへの働きかけ等(加速装置)と、組織目標とプロジェクト目標に向けたマネジメント(駆動力)の双方を備え、組織の創造性を最大限に発揮するための働き方に適した場」と定義している。オフィスの什器・設備やレイアウトといったハード面はもちろんだが、労働者の意識の共有や働き方の変革にもポイントが置かれているのが特徴だ。

テレワークの効果で
グローバル平均を下回る

 最近では、ICTの進化によって「オフィス」の捉え方も変わってきている。大勢の人間が物理的な空間を共有するというだけでなく、ネットワークでつながったバーチャルな空間を含む「ワークプレース」という考え方も広まってきた。

 この考え方を発展させたのが、在宅勤務やモバイルワーク、サテライトオフィスでの勤務などを指すテレワークと見ることもできる。テレワーカーの数は1000万人以上ともいわれており、昨年の東日本大震災以降はBCPの観点からも注目されている。

 しかし、このテレワークに関しても、日本企業が諸外国に比べて遅れを取っていることを示す調査結果が最近発表された。

 ワークプレース・ソリューション・プロバイダ世界大手のリージャスが12年1月に行った調査によると、柔軟な働き方の導入によって「社員の仕事の成果が向上した」と答えた日本企業の比率は45%で、グローバル平均の68%を大きく下回った。同様に、「社員の仕事の生産性が向上した」と回答した日本企業は51%で、こちらもグローバル平均の72%を下回った。

 日本では昨年から今年にかけて、スマートフォンやタブレット端末などのスマートデバイスの活用が一気に広がり、モバイルワークに関して各企業ともまだ試行錯誤の段階にあるということも影響しているかもしれない。しかし、本来であれば生産性向上に貢献するはずのテレワークでも、冒頭で紹介した労働生産性の国際比較と同じような結果になってしまっているのは大きな問題だ。

 国内市場の縮小に加え、経済のグローバル化、ビジネス環境の激変といった中で、日本企業は大きな転換点を迎えている。労働生産性という観点から、オフィスのあり方をもう一度考え直すべき時に来ているのかもしれない。