中には世界シェア100%近い企業も
「グローバルニッチトップ企業」というものをご存じだろうか。「ニッチ分野において高い世界シェアを有し(*)、優れた経営を行っている企業」として、経済産業省が2013年に国内100社を選定し、日本経済の底上げを狙って支援を行っている企業群だ。その内訳を規模別で見ると、大企業6社に対して、中堅企業25社、中小企業69社と、圧倒的に中堅中小企業が多いことが分かる。
同じような調査は日本政策投資銀行も行っており、サプライチェーン上で付加価値を生み出す源泉となっている中堅中小企業を「バリューチェーンコア企業」と呼び、日本の産業競争力を支える存在として積極的な支援を行っている。
日本企業の技術力の高さはかねてから定評がある。そんな中でも、部品や工具、検査機器など、あまり目立たない領域で世界の産業の発展になくてはならない製品やサービスを提供している中堅中小企業が多いのだ。グローバルニッチトップ企業の中には、スマホにも使われている銅と樹脂の密着性を高めるプリント配線板用薬品を製造しているメーカーや、錆びて通常の工具では取り外せなくなったネジの頭をつかんで簡単に外すことができる専用工具を開発しているメーカーなど、グローバルで100%近いシェアを持っている企業もある。
グローバルニッチトップ企業に選ばれた中堅中小企業に共通しているのは、従業員一人当たりの売上高や営業利益率が高く、収益性に優れている点だ。経済産業省は、選定の5年後に当たる2018年にフォローアップ調査を行っているが、平均値で従業員一人当たりの売上高は3350万円から3700万円に、営業利益率も11.0%から11.4%へとさらなる成長を続けている。
こうした数値を裏付ける調査がつい最近発表された。アメリカン・エキスプレスによる「中堅企業調査レポート2019」だ。この調査によると、中堅企業の経営者は、今後3年の平均見込み売り上げ伸長率・利益率をそれぞれ5%、4%と見込んでいるのだ。2019年の日本経済の実質成長率が1.8%と見込まれていることを考えれば、これは非常に高い水準といえる。
同調査にコメントを寄せた日本総合研究所の藻谷浩介・主任研究員は「成熟した内需に対して成長の見込める、大企業が手を出せないニッチマーケットを取り込むことができる強みから、堅調な成長を予想する企業が多いようです」と概観する。
では、グローバルで存在感を示す日本の中堅中小企業が成長を続けるためのカギは何か。先に挙げた「中堅企業レポート2019」にそのヒントが隠されている。
* 大企業は、世界市場の規模が100~1000億円程度であって、製品・サービスの20%以上の世界シェアを保有。中堅企業・中小企業は、製品・サービスの10%以上の世界シェアを保有。