リニア中央新幹線関連の土地の手当てが一段落した「名古屋」駅周辺では 関連工事が着々と進んでいる。分譲マンションは「伏見」駅周辺で集中的に動き出した。 そして、百貨店、公園、オフィスビルと「栄」周辺の再開発が一斉に始まっている。
エステイトアクティフ代表取締役兼代表執行役社長
東海高校、早稲田大学法学部卒。名古屋テレビ放送勤務を経て、現職。名古屋の不動産事情に精通、不動産の総合コンサルタントとして顧客の資産形成に寄与している。2019年には創業50周年を迎えた。
残土の話題が時折出るくらいで、リニア関連の不動産取引は一段落した印象です。「名古屋」駅西側では地価が高騰し、「中村区役所」駅周辺にかけて、坪600万、800万円と、それまでの10倍近い価格での取引もありました。その結果、駅の東西で地価がほぼ同等になってきた印象を受けます。
名駅から「伏見」「栄」にかけて、現在はマンションよりもオフィスビルへの投資が増えているようです。この辺りの錦1丁目や2丁目では土地取引が過熱化しており、広小路通沿いでは、“塩漬け”になった土地も見受けられます。
それでも、以前仕込んでいた土地で大手デベロッパーによるマンションの分譲が相次いでいます。この周辺の学校区である名門「御園小学校」は廃校の危機がささやかれてきましたが、新住民の増加でもちこたえることができるのでしょうか。
投資用賃貸物件のレオパレス21やMDIといったデベロッパーの動きがピタリと止まり、40坪程度の土地への需要が消滅してしまいました。建売住宅の価格はマンションより少し安く設定されています。10月の消費増税後は、一時的に上昇した中古マンションの取引価格も下落傾向にあります。
デベロッパーも、坪単価300万円台のマンションを販売する勇気がなくなってきたようで、まずは賃貸物件として建ててから、転売をしようという思惑もうかがえます。
丸の内辺りでもマンション建設のための土地売買がありましたが、坪800万円とかなり高額で取引されたようです。
「栄」で進む再開発
不足する高級ホテル
2020年は「栄」の再開発が一挙に顕在化してきます。19年春に閉館した中部日本ビルディングは建物の解体が進んでいます。5年後の完成予定で、高さ170mの高層ビルが広小路通に面して登場しそうです。
加えて、久屋大通公園を挟んで向かい側にある名古屋三越(オリエンタルビル)の建替え再開発案も発表されました。こちらのオーナーは名古屋の4大百貨店の1つであったオリエンタル中村百貨店の後継となるオリエンタルビルで、代表の平松潤一郎氏はフェラーリのコレクターとしても有名です。
10年後の竣工をめどに、34階建ての高さ180m、延べ床面積13万㎡という超高層複合ビルを検討しており、「栄」の新しいランドマークになりそうです。
この再開発ビルにも検討されているのが名古屋で不足しているとされる高級ホテルです。名古屋城の西に面するホテルナゴヤキャッスルは、建替えのため20年秋から営業を停止する予定ですが、それを代替する施設がありません。
一方、セントレア(中部国際空港)横には日本初の国際空港直結型である愛知県国際展示場「Aichi Sky Expo」(常滑市)が19年8月にオープンしました。
名古屋市内では、外国からの要人などに対応できる高級ホテルが足りないことが問題になっています。名古屋市も誘致に積極的なようで、世界的なブランドの名前もささやかれていますが、更地になっている「丸栄」の跡地で、オーナーの興和がどのように動くのかがまず注目されます。
ところで、名駅にある柳橋中央市場の中核施設が売りに出されたといううわさが広まっています。買い手はパチンコ会社だとか。駅前の一等地だけに、市場の機能は移転しての再開発となることでしょう。