解体までを見据えた
長期修繕計画を

「本来、大規模修繕工事とは外壁に施すもの(塗装・防水他工事)を指します。10~12年ごとに実施されるのが主流ですが、1回目の工事が適切なら、2回目を14年後に延ばして積立金不足を解消することも可能。なお、大規模修繕工事以外の給排水設備の更新(更生工事の実施時期は表参照)工事は、30年程度前後で実施するのが一般的です」

 積立金が足りないからと修繕工事を安価に済ませようとすれば、工法によっては逆に建物寿命を縮めることもある。その一方で、たとえ高額であっても適正な処置であれば、修繕周期を延ばしてトータルでかかる費用を圧縮することもできる。

「1回目の修繕工事では、コンクリートの保護に力点が置かれます。2回目以降は外壁に塗布する仕上げ材他(コンクリート躯体保護機能)の延命処置。1回目でコンクリートのひび割れ等の不具合を徹底的に修繕して鉄筋にサビが発生するのを防いでおけば、2回目以降の工事費用は随分抑えられます」

施工業者を選別する
四つの書類

 理想を言えば、建設当初から解体時期(いつまでその建物を持たせるか)を念頭に置いた長期修繕計画が定められていることだ。しかし、曖昧な想定で大ざっぱな計画が少なくないのが厳しい現実である。

「1回目の工事が実施されてから、計画が甘かったことに初めて気が付くというパターンが多いものです。そうならないためにも、建物修繕に関する高度なノウハウを持つ設計コンサルタント、理事会運営ノウハウを持つマンション管理士などの第三者を交えながら、できるだけ早期にマンションの管理組合が協議を重ねることが望ましいでしょう」

 長期修繕計画の見直しとともに、実際に工事を施工する業者の選定も非常に重要だ。費用面もさることながら、「職人の熟練度が高い」「手抜きをしない」などといった工事の質も吟味する必要がある。

「施工業者を公募する際、(1)建物調査診断書、(2)どこをどう修繕すべきかを記した仕様書、(3)それにかかる費用の概算予算書、(4)その後も踏まえた長期修繕計画、といった四つの書類提出を義務付ければ、おのずと信頼できる業者に絞り込まれてくるはずです。その上で、面倒でも事前に管理組合の代表者数人で候補業者が過去に手掛けた物件を見学し、そこの管理組合の人にも話を聞いてみるべきです」

 実際に自分たちの足で情報を集め、自分たちの目で見定めるからこそ、納得できる判断が下せる。自分たちの住まいの長寿を願うなら、管理組合が中心となって積極的にアクションを起こしたい。