すっかり常態化した低金利に、老後の暮らしをはじめとする将来へのさまざまな不安――。資産運用の必要性を痛感しつつも、世界経済の混迷や国内景気の低迷で、積極的な行動に踏み切れない思いを抱いている人も多いだろう。だが、視点や視線を変えて長いスパンで自分の人生や世界経済を展望すれば、今のうちから打っておくべき手が見えてくる。ファイナンシャル・プランナーの和泉昭子氏にこれからのマネーライフプランの考え方を聞いた。

和泉昭子氏
生活経済ジャーナリスト ファイナンシャル・プランナー(CFP)
東京生まれ。横浜国立大学教育学部卒業後、福武書店(現ベネッセコーポレーション)、日本短波放送を経て、フリーのキャスターとして独立。NHKを中心にニュース・情報番組を担当。1995年にCFP(R)取得後ファイナンシャル・プランナーとして、2002年にはキャリアカウンセラーとしての活動も開始。テレビ・ラジオのコメンテーター、新聞・雑誌の執筆・監修、講演・セミナー等で活躍中。

 「もはや収入が増えない時代となっており、経済的な豊かさ以外のことに価値観を求め、人々の幸せの基準が変化しつつあります。以前から年金をテーマにしたセミナーは反響が大きいのですが、最近の特徴は、非常につつましやかな老後の生活を想定している人が多いことです」

 ファイナンシャル・プランナーの和泉昭子氏は、現在の状況をこう指摘する。

生活防衛的な
資産運用が必要

 とはいえ、資産運用を完全に放棄してしまえば、いくらつつましく暮らしたとしても、人生の選択肢が狭まりかねない。だからこそ、和泉氏は、長期的なスパンで今後の変化を捉えておくべきだと訴える。

「確かに、現在、頼みの綱だった新興諸国経済が減速しているように感じられるでしょうが、この先も新興国を中心に地球規模で人口が拡大することは目に見えています。人口が増えれば食料や資源などのコモディティ(商品市場)に対する需要が拡大し、価格は上昇します。たとえ日本国内の景気が減退したとしても、そうしたグローバルな影響を受けて、国内物価の上昇が起こり得るわけです。そのため、資産を殖やすためというより、生活防衛的な観点からトータルに資産運用を考えるべき時代となっています」

医療と介護の
制度変更を見据える

 では、こうした変化にどうやって備えておくのが賢明なのだろうか。

「コモディティは物価上昇と連動するわけですから、今のうちに資産の数%を投じておけば、リスクヘッジできる可能性があります。また、短期では期待できないものの、長い目で見れば新興諸国の経済成長は続くはず。これらの投資対象に少しずつ積み上げ(積立投資など)で運用を続けるのも一考」

 つまり、目先の運用効率ではなく、中長期スパンで世界の成長を享受できるような資産を今から少しずつでも準備しておくということだ。