コスト構造改革の代表的な手段と捉えられているのが、アウトソーシングである。アウトソーサーの持つ規模、あるいはオフショアリングをテコにしたコストメリットは大きな魅力だ。また、専門企業ならではのノウハウを活用し、既存業務をより合理的かつシンプルなものに変革できることもある。

 ただ、その際にも先の原則は変わらない。遠藤氏はこう説明する。

「明らかにアウトソーシングが効果を発揮する業務はあります。例えば、給与計算などは、多くの企業にとって外部化が有効な業務といえるかもしれません。一方、競争力の源泉と認識されている基幹業務については、そうした議論は起きないでしょう。問題はその中間領域、つまりグレーゾーンをどう考えるかです。どの業務がアウトソーシングに適しているのかを、個別の状況に応じて判断しなければなりません」

図 コスト削減のポイント拡大画像表示

 グレーゾーンで上手にアウトソーシングを活用すれば、コスト競争力を高めることができる。そのためには、全体のバリューチェーンを視野に入れた戦略が欠かせない。

M&Aをテコに
新たなコスト構造を手に入れる

 また、新たなコスト構造を手にするための手段として、M&Aを活用するケースも増えていると遠藤氏は言う。

「長年かけてつくり上げた国内のコスト構造を改革するのは容易ではありません。社内には抵抗する部門もあるでしょうし、時間も労力もかかります。その代替手段になり得るのがM&A。例えば、アジア諸国の企業などを買収すれば、まったく異なるビジネスモデル、コスト構造を手に入れることができます。そのモデルを磨いて新興国市場で勝負する。そんなシナリオを描いて実行に移す日本企業が増えています」

 コスト競争力を高めるための手段はさまざまだ。これまでの取り組みを通じて、企業経営者は「乾いたぞうきんを絞ってきた」と感じているかもしれないが、アウトソーシングやM&Aのような手段にも視野を広げれば、別の打ち手が見えてくるかもしれない。

 企業を取り巻くビジネス環境は日々変化している。最適コストの水準や、それを実現するための手段も変わり得る。ダイナミックな戦略に基づくコストのあり方を吟味すれば、今なすべきことが見えてくるのではないだろうか。