合意形成の段階には、準備から検討、計画、実施までがある(図1)。準備や検討段階でコンサルタントを導入し、勉強会を開催して、区分所有者の意識向上や知識の獲得を図るのが望ましいという。コンサルタントの選定には、再開発コーディネーター協会などの業界団体に相談するのも一つの手だ。
建て替え推進決議が成立し、計画段階に入ったところで、今度は床取得者として事業を成立させる役割を担うデベロッパーを選定する。住宅ブランドや建て替え実績、商品企画の内容、仮住居の紹介など工事期間中のサポートなどが選定のポイントだ。高齢者や子育て世代向けの施設を設けるなど、住戸以外の部分での提案に力を入れる事業者も増えている。それらを実現するための関連会社や提携会社などとの連携にも注目したい。
最後に、これまでの建て替え成功事例に共通して見られる特徴として、山田氏は「立地条件」「容積率」といった物理的条件に加えて、「リーダーとそれを支える組織力」を挙げた。
「建て替えは長い年月をかけて、場合によっては何百人もの単位で話し合い、事業を進めていくものです。区分所有者それぞれの利害を調整し、大多数が納得できる落としどころを見つけ合意に至るには信頼の厚いリーダーの存在が欠かせません」
もちろん、そうしたリーダーを支える組合の組織体制、いわばコミュニティ基盤のあり方も問われる。マンション建て替えでは、区分所有者全員が一種の運命共同体となる。専門家の活用とともに、日頃からのコミュニティのあり方も、建て替え成功の重要な要素といえそうだ。