AWSとKDDIが国内初提携、5G環境による超低遅延データ処理を実現

複数の実証実験で、5Gがもたらす効果を確認

――AWS Wavelengthの具体的な特徴は何でしょうか。

岡嵜 AWS Wavelengthには大きく三つの特徴があります。一つ目は、従来から提供しているAWSのクラウドサービスと同じように、初期費用がかからず、使った分だけ料金を支払う従量課金方式で利用できることです。

 MECは自社でサーバーを設置して運用することも可能ですが、その場合、どうしてもコストや運用負荷が重くなります。拠点が全国各地にあると、それぞれにサーバーを設置しなければなりません。その点、AWS Wavelengthなら5G対応エリア内のどこからでも使えますし、必要に応じて処理能力を増やすことも簡単にできます。

 二つ目は、すでにご利用いただいているお客さまは、今までと変わらない環境で開発や運用ができることです。新しい開発手法や運用モデルを覚えなければならないとなると導入時の負荷が大きくなりますが、使い慣れているAWSのエクスペリエンスそのままであるため、ストレスを感じることなく、アジャイル開発を進めることができます。

 そして三つ目は、複数のグローバル拠点に展開できることです。例えば、日本で開発したアプリケーションを、そのまま海外の工場やサービス拠点などでも利用できます。現在、5GによるAWS Wavelengthは米国、日本、韓国の3カ国で提供しておりますが、今後、他の国や地域にもどんどん広がっていく予定です。

――サービス開始に先駆け、5G環境でのAWS Wavelengthの活用について、幾つかの実証実験を行われたそうですね。

丸田 業種が異なる数社と実証実験を行いました。ゲーム制作会社のTVT様は、5GとAWS Wavelengthを活用して配信することで、オンライン対戦ゲームの体験がどれほど向上するのかを検証しました。4Gと比べて5Gでは通信由来の遅延が半減し、勝率が上がったことが報告されています。

 また、遅延を織り込んだ開発をしなくて済むことが分かり、それにより「開発負担が軽減されることが、自分たちにとっては何よりのメリットです」と語っておられました。

 電気計測器メーカーの日置電機様とは、IoTデバイスの時刻同期精度の変化を測定する実証実験を行いました。5GとAWS Wavelengthによって、従来は約10ミリ秒あった時刻同期の変動幅が、2ミリ秒まで短縮されました。

 この他、エンタープライズAIサービスを提供するブレインズテクノロジー様とは、各種センサーデータを基に、AI(人工知能)を活用した製造設備の故障予知の実証実験を行いました。4Gと比較して遅延時間が約43%短縮され、「迅速な異常判断を行うソリューションの商用化が実現できそうです」とおっしゃっています。

AWSジャパンの岡嵜禎氏(左)とKDDIの丸田徹氏

実際の環境を使って、5Gビジネスの開発を支援

――今後、どのようなユースケースが想定されるでしょうか。

岡嵜 ゲーム、コネクテッドカー、医療など、幅広い領域で応用できると思います。例えば、従来のゲームストリーミングサービスは、サーバーからの反応が遅いため端末に一定の処理能力を持たせなければなりませんでしたが、超低遅延の5G環境なら端末側のスペックを軽くすることができます。その分、ゲーム端末の価格が下がり、より多くのユーザーに販売できるようになるかもしれません。

 また、コネクテッドカーが道路の異常を検知して安全運転を支援するといった機能においても、ミリ秒単位で制御可能になるため、より事故を回避できるようになるはずです。

 いずれにしても、応用研究はまだ始まったばかりですので、これからさまざまなアイデアが生まれ、ユースケースが広がっていくでしょう。

丸田 「こんなことができるのではないか」という想像からスタートすることもあれば、実際に試してみて、思いも寄らなかった効果が得られることもあります。5GとAWS Wavelengthの組み合わせは、新たな気付きをもたらすキーテクノロジーになると思います。

――企業が5GとAWS Wavelengthを活用して新ビジネスを創出する取り組みを、両社はどのようにサポートしていきますか

岡嵜 AWSはグローバルで多くの企業さまにご利用いただいています。その知見を共有することに加え、世界に数万、日本で740社以上いるパートナー企業と共に協力しながら、開発や運用をご支援していきます。

丸田 KDDIは、実際の5G通信環境やITインフラを使ってお客さまと新規ビジネスを創出する拠点「KDDI DIGITAL GATE」を設けていますが、2021年1月からAWS Wavelengthを使った実証実験も行えるようになりましたので、ぜひご利用いただければと思います。

 また当社は、さまざまなテクノロジー企業との提携によってお客さまのDX推進を支援する「KDDI 5G ビジネス共創アライアンス」を設立しています。業種・業態ごと、企業ごとの課題に対応した具体的なソリューションをアライアンス参加パートナーと共にご提案します。

――KDDIは、政府が目標とする「Society 5.0」(経済発展と社会的課題の解決を両立する持続可能な生活者中心の社会)の実現を5Gで加速する「KDDI Accelerate(アクセラレート)5.0」という構想を掲げています。5GとAWS Wavelengthの組み合わせは、この構想をどのように後押しするのでしょうか。

丸田 「KDDI Accelerate 5.0」は、ひと言で言えば、リアル空間のデータを吸い上げ、それをバーチャル空間で意味付けし、リアル空間にフィードバックすることで、より良い社会を実現する構想です。このフィードバックループが5GとAWS Wavelengthの組み合わせによって高速回転していきますので、さまざまな社会課題の解決がスピードアップできるはずです。

 これからはユーザー企業の皆さまと共に、構想実現に向けたユースケースをどんどん積み上げていきたいと思います。5GとAWS Wavelengthを組み合わせたサービスは東京、大阪を皮切りに順次全国の大都市に広げていく予定ですので、ご期待ください。

※感染対策には万全を期し、写真撮影時のみマスクを外しています

●問い合わせ先
KDDI株式会社
URL:https://biz.kddi.com/
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