金儲けの神様「邱永漢」と出会って、2005年より中国四川省成都市に在住。日本生まれの韓国人で、現在はグループ会社3社の社長兼取締役を務める金さん。新型コロナウイルス感染拡大から1年以上が経ち、飲食業における国内需要の高まりと、そこから見えてきた中国の今をレポートします。
中国国家統計局によれば、2021年1~3月期の中国の経済成長率は、前年同期比で18.3%増え、統計を取りはじめた1992年以降で最大の伸びとなった。これについては例によって、「中国の統計は嘘だらけだ」という批判があるだろうが、それについて議論するつもりはない。
私は中国の西部、四川省成都でレストランを営んでいるが、まずはその売上推移を見ていただきたい。コロナ前の2019年2月に170万元だった売上は、20年2月には1万7000元と100分の1になっている。
その理由はもちろん、新型コロナの感染を抑えるために中国全土がロックダウン状態になったからだ。ところがそれから1年たち、今年の2月は200万元超とコロナ前の売上を20%も上回っている。
●月次売上の推移

その理由は、よくいわれるように、海外旅行ができなくなったひとたちが、感染抑制によって近場で活発に消費するようになったからだ。中国の景気が回復してきているのは、すくなくとも飲食業でははっきり実感できる。
しかし、中国で起きているのはこれだけではない。この国で10年以上商売をする人間の実感ベースで、“中国で起きたコロナ前後の変化”を読み解いてみたい。
中国人のブランド好きが靴にも向かい出した
我々が成都で営む焼肉屋「TokyoBeefDining」(一昨年、成都で日本料理ナンバー1にランキングされた)は客単価が日本円で約5000円程度の、成都においては中~上(やや高級)の店に位置づけられるが、とくにこの半年でお客さまの靴事情に大きな変化が起きている。
中国人のブランド好きは昔からだが、お金が足元のファッションに向う傾向は、店の下駄箱を観察するに、ここ最近加速しているようだ。


私はこれを、海外に行けずに余ったお金を国内で使っているだけでなく、「ファッションをはじめ文化的側面により高い消費傾向がみられる」と思っている。デザインや食文化、絵画や歴史といった文化総合的な側面における中国の伸びを意味しているのではないか、ということだ。
飲食の分野でも、「海外の消費体験に負けないような“本物志向”の消費の強まり」が感じられる。このことは、ここ最近、有名人がオープンする店が相当に増えていることからもわかる。

「有名人が店を始める」背景には、
1) 相当なお金がある(当たり前ですよね)
2)この数年の著名人のお金にかかわるスキャンダルと、社会や政府によるつるし上げによって、資産を「お店」のような表の商売で運用しようとしている
2) 成功すれば自身のブランドが強化される
があるわけだが、意外なのは、ちょっと前までは有名人の店は、デザインや宣伝は完璧にプロがこなしていても品質やお味はいまいちのところが多かったのだが、最近は美味しい店が多くてびっくりしている。
これは、私の周りの中国人や在中の日本人も皆口をそろえて同じ意見だ。全体として消費の水準(本物志向)が上がっているのだ。
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